岡山県北の弁護士 津山総合法律事務所  

岡山県北の弁護士 津山総合法律事務所(所長 弁護士黒田 彬)

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西村啓聡・一法師拓也の仮処分命令申立書に対する答弁書

 

 

  西村啓聡・一法師拓也の

  本サイトの記事の削除を

  求める仮処分命令申立書

  西村啓聡・一法師拓也の

  仮処分命令申立書に対す

  る答弁書

 西村啓聡・一法師拓也の

仮処分命令申立の取下書

 

浮田建設(株)の従業員

解雇を解雇権の濫用とし 

て無効とした仮処分決定

不動産訴訟についての

最近の判決

 倒産処理

破産・民事再生

 

西村啓聡・一法師拓也の仮処分命令申立書に対する答弁書

 

     西村啓聡・一法師拓也が,本サイトの記事の削除を求めて岡山地方裁判所津山支

    部に申し立てた仮処分命令申立事件につき,令和元年5月22日,第1回審尋期日

    が開かれたため,以下の答弁書を提出いたしました。

 

 

 

      平成31年(ヨ)第2号仮処分命令申立事件

  

      債権者 西   村   啓   聡 外1名

 

      債務者 黒   田       彬

 

      

                   答   弁   書

 

               岡山地方裁判所津山支部 御中

 

                              令和元年5月22日

 

                      債務者 黒   田       彬

 

 

      第1 申立ての趣旨に対する答弁

         債権者らの本件仮処分申立てを却下する。

         申立費用は債権者らの負担とする。

        との裁判を求める。

      第2 申立ての理由に対する答弁

         債務者が,その開設するインターネット上のサイトに仮処分命令申

        立書別紙記事目録記載1ないし4の記事を掲載した事実については認

        め,その余の事実については,否認若しくは争う。

                 第3 債務者の主張

       1 債務者の行為の適法性

         刑法230条の2は,公然と事実を適示し,人の名誉を毀損した場

        合であっても,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,そ

        の目的がもっぱら公益を図ることにあったと認められる場合には,事

        実の真否を判断し,真実であることの証明があったときは,これを罰

        しないとして,その行為の違法性が阻却されることを明らかにしてい

        る。

         債務者がそのインターネット上のサイトで摘示した事実は,弁護士

        である債権者らがインターネット上において悪質なサギ広告を行って

        いるという事実であり,弁護士の広告の持つ社会的な意義に照らせば,

        それは公共の利害に関する事実である。

         債務者が上記事実を摘示した目的は,一般市民に債権者らの悪質な

        サギ広告に勧誘されないよう警告するためであって,もっぱら公益を

        図ることにあった。

         したがって,債務者の行為は,摘示した事実が真実である限り,そ

        れにより債権者らの社会的評価が低下したとしても,違法性は阻却さ

        れる適法な行為である。

       2 債務者が摘示した事実

         債務者がそのサイトにおいて摘示した事実は,債権者らがインター

        ネット上において悪質なサギ広告を行っているという事実であるが,

        「サギ広告」の具体的な内容については,債務者の主張は,債務者が

        平成31年3月11日に債権者らの懲戒処分を求めて岡山弁護士会に

        提出した懲戒請求書とその後に岡山弁護士会綱紀委員会に提出した主

        張書面との間で相違がある。

         債務者が①懲戒請求書,②平成31年3月22日付主張書面,③同

        4月8日付主張書面において,それぞれ「サギ広告」について述べて

        いるところは以下のとおりである。

         ① 懲戒請求書

          「対象弁護士らは,平成29年8月頃,「津山の弁護士による交通

          事故・後遺障害相談(弁護士法人西村綜合法律事務所)」と題する

          インターネット上のサイトを開設し,同サイトのトップページに  

          おいて,「岡山県北有数のご相談・解決実績」,「大幅な賠償金   

          の増額実績多数」という表示をなし,対象弁護士法人が,交通事

          の示談交渉について,「岡山県北有数のご相談・解決実績」を

          有し,「大幅な賠償金の増額実績多数を」有すると誤認させるよ

          うな表示をなしている。

                                しかし,真実には,対象弁護士法人には,平成27年1月15日

          の設立以来,交通事故の示談交渉について,大幅な賠償金の増額を

          実現したといえる解決事例は僅かしか存在せず,対象弁護士法人が,

          交通事故の示談交渉について,「岡山県北有数のご相談・解決実績」    

          を有し,「大幅な賠償金の増額実績多数」を有するというのは虚偽

          の表示であることは,以下のとおりであって,本件サイトの対象弁

          護士法人の広告は悪質なサギ広告というほかないものである。」

          (2~3頁)。

         ② 平成31年3月22日付主張書面

          「すなわち,対象弁護士らは,対象弁護士法人が,平成27年1

          月15日の設立以来,交通事故の示談交渉について,大幅な賠償

          金の増額を実現したといえる解決事例は僅かしか存在しない(「平

          成29年度の事例」の3件のみ。)にもかかわらず,対象弁護士一

          法師が同弁護士法人の社員となる以前に東京の弁護士法人法律事

          務所Astiaに勤務弁護士として在籍していた時期に関与した①

          ないし④の事件を「最新」の「解決事例」として宣伝することに

          より,それが対象弁護士が示談交渉を受任し,賠償金の増額を実

          現した最新の解決事例であるかのように偽装し,対象弁護士法人

          が,交通事故の示談交渉について,「岡山県北有数のご相談・解

          決実績」を有し,「大幅な賠償金の増額実績多数」を有するとい

          う虚偽の宣伝をなしているものであって,本件サイトにおける対

          象弁護士法人の広告は,悪質なサギ広告というほかないものであ

          る。」(3頁)

         ③ 平成31年4月8日付主張書面

          「しかし,そもそも,弁護士が,他の弁護士が過去に受任した事

          件を自らが最新に受任した事件であるかのように偽装し,その宣

          伝に使用するということはサギ師同然の行為であって,対象弁護

          士ら行った行為は弁護士の行為として絶対に許されるものではな

          い。

           したがって,本件サイトにおける対象弁護士法人の広告は,対

          象弁護士法人が,交通事故の示談交渉について,「岡山県北有数

          のご相談・解決実績」を有し,「大幅な賠償金の増額実績多数」

          を有するという宣伝の当否は別としても,対象弁護士一法師が対

          象弁護士の社員となる以前に東京の法律事務所Astiaに勤務弁護

          士として在籍していた時期に関与した①ないし④の事件を,「最

          新」の「解決事例」として表示し,それが対象弁護士法人が示談

          交渉を受任し,賠償金の増額を実現した最新の解決事例であるか

          のように偽装している点において,弁護士としては絶対に許され

          ない悪質なサギ広告と言うべきものであり,かかるサギ広告を常

          習的に行っている対象弁護士らは懲戒処分を免れないものであ

          る。」(8~9頁)

 

         債務者がインターネット上で摘示した事実は,

         A 債権者らは,弁護士法人西村綜合法律事務所が,平成27年1

          月15日の設立以来,交通事故の示談交渉について,大幅な賠償

          金の増額を実現したといえる解決事例は僅かしか存在しないにも

          かかわらず,同弁護士法人が,交通事故の示談交渉について,「岡

          山県北有数のご相談・解決実績」を有し,「大幅な賠償金の増額

          実績多数」を有すると誤認させるような虚偽の表示をなした。

        という評価的要素を含む部分と,

         B 債権者らは,平成29年8月頃,本件サイトを開設するにあた

          り,一法師が平成27年2月18日に弁護士法人西村綜合法律事

          務所の社員となる以前に東京の弁護士法人法律事務所Astiaに

          勤務弁護士として在籍していた時期に関与した4件事件を「最

          新」の「解決事例」として表示し,それが同弁護士法人が示談交

          渉を受任し,賠償金の増額を実現した最新の解決事例であると誤

          認させるような表示をなした。

        という具体的事実を適示している部分とに大きく分けられる。

         債務者は,①においては,Aの事実を「サギ広告」の内容とし,B

        の事実をその根拠としているが,②③においては,Bの事実を「サギ

        広告」の内容とし,Aの事実については,「対象弁護士法人が,交通

        事故の示談交渉について,「岡山県北有数のご相談・解決実績」を有

        し,「大幅な賠償金の増額実績多数」を有するという宣伝の当否は別

        としても」と,その主張を半ば撤回している。

         これは,以下のような事情にもとづくものである。

        ⑴ 債権者らは,平成29年8月頃,弁護法人西村綜合法律事務所

         が,交通事故の示談交渉について,「岡山県北有数のご相談・解決実

         績」を有し,「大幅な賠償金の増額実績多数」を有すると宣伝する本

         件サイトを開設した。

          債権者らは,本件サイトを開設する以前から,一法師が弁護士法

         人西村綜合法律事務所の社員となる以前に東京の弁護士法人法律事

         務所Astiaに勤務弁護士として在籍していた時期に関与した4件

         の事件(以下「4件の事件」という.)を,弁護士法人西村綜合法律

         事務所が示談交渉を受任し,賠償金の増額を実現した事件であると

         誤認させるようなサギ広告をインターネット上で常習的に行ってい

         た。

          しかし,本件サイトにおける弁護士法人西村綜合法律事務所の広

         告は,それまでの広告と比較しても,

          ① 債権者らは,それまでの広告においては,「4件の事件」を

           「当事務所所属の弁護士による成功事例」として表示し,同弁

           護士法人が示談交渉を受任し,賠償金の増額を実現した事件と

           して表示することは避けていたのに対し,本件サイトにおいて

           は,「4件の事件」を「解決事例の最新記事」,「新着情報」

           として表示し,それが同弁護士法人が示談交渉を受任し,賠償

           金の増額を実現した最新の解決事例であると誤認させるような

           表示をし,

          ② それにより,「解決事例」の件数の水増しを行い,同弁護士法

           人が,交通事故の示談交渉について,「岡山県北有数のご相談・

           解決実績」を有し,「大幅な賠償金の増額実績多数」を有すると

           いう宣伝の根拠としている。

         点において悪質なものであった。

          そのため,債務者は,岡山弁護士会に債権者らの懲戒処分を請求

         することを決断した。

        ⑵ 岡山弁護士会会則9条⑷は,会員が「弁護士及び弁護士法人の品

         位を毀損するおそれのある広告」を行うことを禁止している。

          しかし,弁護士がその広告において自らが受任したものではな

         い事件を「解決事例」として表示し,それにより「解決事例」の件

         数」の水増しを行うなどということは,通常は考えられないことで

         あり,「弁護士及び弁護士法人の品位を毀損するおそれのある広告」

         を禁止している岡山弁護士会の会則も,本来は本件のようなケー

         スを想定したものではなかった。

          そのため,債務者は,岡山弁護士会に債権者らの懲戒処分を請求

         するにあたり,本件サイトにおける弁護士法人西村綜合法律事務所

         の広告が岡山弁護士会会則の禁止する「弁護士又は弁護士法人の品

         位を毀損するおそれのある広告」に該当するとするためには,それ

         なりの理論構成が必要となり,債務者は,それを本件サイトにおけ

         る同弁護士法人の広告が不正競争防止法に違反し,刑事罰の対象と

         なるものであることに求めた。

            不正競争防止法2条14号は「役務の質,内容」については誤認さ

         せるような行為を「不正競争行為」とし,同法21条2項5号は「役

         務の質,内容」について誤認させるような虚偽の表示をすることを

         刑事罰の対象としており,債務者としては,Bの事実は,「役務の

         質,内容」について誤認させるような虚偽の表示をしたものという

         ことはできないが,Aの事実は,交通事故の示談交渉という弁護士

         法人西村綜合法律事務所の役務について,「役務の質,内容」につ

         いて誤認させるような虚偽の表示をしたものということができる

         と考えた。

          懲戒請求書における債務者の主張が,Aの事実を債権者らの「サ

         ギ広告」の内容とし,Bの事実をその根拠として主張するという理

         論構成をとっているのは,上記のような債務者の不正競争防止法に

         ついての解釈に基づくものである。

                        ⑶ しかし,債務者は,岡山弁護士会への懲戒請求書の提出への後,

         上記のような不正競争防止法の解釈を見直さざるをえなくなった。

          債務者は,本件サイトにおける弁護士法人西村綜合法律事務所の

         広告が不正競争防止法に違反し,刑事罰の対象となるものであること

         を,同広告が岡山弁護士会会則の禁止する「弁護士及び弁護士法人

         人の品位を毀損するおそれのある広告」に該当する理由としていた

         ため,岡山弁護士会に債権者らの懲戒処分を請求すると同時に,岡

         山地方検察庁津山支部に懲戒請求書とほぼ同一の内容の,債権者ら

         を不正競争防止法21条2項5号違反で告発する告発状を提出して

         いたが,検察官から,債務者の告発状では,債権者らの行為が不正

         競争防止法の構成要件に該当することの主張が十分ではない旨の指

         摘があったためである。

          検察官の指摘は,仮に,弁護士法人西村綜合法律事務所に所属の

         弁護士が交通事故の示談交渉についての知識・経験を有していない

         にもかかわらず,それを有していると誤認させるような表示をした

         のであれば,それは,交通事故の示談交渉という役務について,「役

         務の質,内容」について誤認させるような虚偽の表示をしたものと

         いうことができるが,本件においては,一法師が交通事故の示談交

         渉について一定の知識・経験を有していることは事実であり,同弁

         護士法人が,交通事故の示談交渉について,大幅な賠償金の増額を

         実現したといえる解決事例は僅かしか存在しないにもかかわらず,

         「岡山県北有数のご相談・解決実績」を有し,「大幅な賠償金の実

         籍多数」を有すると誤認させるような虚偽の表示をしたとしても,

         それは,「役務の質,内容」について誤認させるような虚偽の表示

         をしたものとは言えないのではないか,というものであった。

          債務者は,検察官から指摘された問題を検討した結果,検察官の

         指摘は債務者の主張の弱点を突いており,「役務の質,内容」につ

         いて誤認させるような表示という不正競争防止法の構成要件を厳格

         に解釈すれば,本件サイトにおける弁護士法人西村綜合法律事務所

         の広告が不正競争防止法に違反し,刑事罰の対象となるとすること

         は困難であることは認めざるをえなかった。

          そのため,債務者は,債権者らを不正競争防止法違反で告発する

         ことは断念するとともに,本件サイトにおける弁護士法人西村綜合

         法律事務所の広告が不正競争防止法に違反し,刑事罰の対象となる

         ものであることを,同広告が岡山弁護士会会則の禁止する「弁護士

         及び弁護士法人の品位を毀損するおそれのある広告」に該当する理

         由としている懲戒請求書における債務者の主張については,これを

         訂正する必要に迫られた。

          債務者の平成31年3月22日付主張書面は,上記のような事情

         の下で,懲戒請求書における債務者の主張を補充・訂正するものと

         して作成し,岡山弁護士会綱紀委員会に提出したものであり,債務

         者が同書面をサイトで公開した理由は,債務者が懲戒請求書を公開

         したことは違法性がないとしても,懲戒請求書の不正確な記述によ

         って必要以上に債権者らの社会的評価を低下させた点については,

         それを訂正(債権者らの広告は悪質な「サギ広告」ではあるが,必ず

         しも不正競争防止法違反として刑事罰の対象となるものではないこ

         と)した内容の文書を公開することにより,低下した社会的評価を回

         復する義務が債務者にはあると考えたからにほかならない。

         上記のように,債務者が懲戒請求書においてAの事実を主張してい

        るのは,懲戒請求書を作成した時点での債権者の考えでは,Aの事実

        が「役務の質,内容」について誤認させるような虚偽の表示という不

        正競争防止法21条2項5号の構成要件に該当し,本件サイトにおけ

        る弁護士法人西村綜合法律事務所の広告が刑事罰の対象となるもので

        あることが,同広告が岡山弁護士会会則の禁止する「弁護士及び弁護

        士法人の品位を毀損するおそれある広告」に該当する理由だったから

        である。

         債務者は,その後考えを改め,現在では,本件サイトにおける弁護

        士法人西村綜合法律事務所の広告が,岡山弁護士会会則の禁止する「弁

        護士及び弁護士法人の品位を毀損するおそれのある広告」に該当する

        とするためには、平成31年4月8日付主張書面における債務者の主

        張のように,Bの事実はサギ師同然の行為であって,弁護士としては

        絶対に許されないものであることを主張すれば必要十分であり,懲戒

        請求書のように,同弁護士法人が,交通事故の示談交渉について,「岡

        山県北有数のご相談・解決実績」を有し,「大幅な賠償金の増額実績

        多数」を有するという表示を虚偽の表示とするまでの必要はなかった

        と考えている。

         しかし,債務者が,懲戒請求書においてAの事実を主張したのは,

        Bの事実という確実な根拠に基づくものであり,後述のように,債務

        者がBの事実を根拠としてAの事実を主張したその論理に基本的に誤

        りはないものと考える。

       3 弁護士法人西村綜合法律事務所の交通事故事件の「実績」

                          債権者は,「西村綜合法律事務所においては,平成27年1月15

        日の設立以来,新サイトの「解決事例」には掲載していない多数の交通

        事故を受任し,解決に至っている。」(仮処分命令申立書)と主張し,同

        弁護士法人が受任した交通事故の事件の記録を証拠として提出してい

        る(甲11~14)。

         しかし,債務者は,懲戒請求書において,弁護士法人西村綜合法律

        事務所が交通事故事件について一定の実績を有していることを否定し

        てはいない。

         懲戒請求書における債務者の主張は,Bの事実を根拠として,

         A 債権者らは,弁護士法人西村綜合法律事務所が,平成27年1

          月15日の設立以来,交通事故の示談交渉について,大幅な賠償

          金の増額を実現したといえる解決事例は僅かしか存在しないにも

          かかわらず,同弁護士法人が,交通事故の示談交渉について,「岡

          山県北有数のご相談・解決実績」を有し,「大幅な賠償金の増額

          実績多数」を有すると誤認させるような虚偽の表示をなした。

        という事実を主張しているものである。

         上記から明らかなように,債務者は,懲戒請求書において,

         ①「岡山県北有数のご相談・解決実績」という表示と「大幅な賠償

          金の増額実績多数」と表示を一体のものとして取り扱い,

         ② 弁護士法人西村綜合法律事務所には,真実には,平成27年1

          月15日の設立以来,大幅な賠償金の増額を実現したといえる解

          決事例は僅かしか存在しないということを理由として,上記表示

          を虚偽の表示としている。

        のである。

         債務者は,懲戒請求書において,弁護士法人西村綜合法律事務所が,

        交通事故の示談交渉について,「岡山県北有数のご相談・解決実績」を

        有し,「大幅な賠償金の増額実績多数」という表示を虚偽の表示として

        いるが,債務者が問題としているのは,もっぱら「大幅な賠償金の増額

        実績多数」という表示についてであって,「岡山県北有数のご相談・解

        決実績」という表示については,それ自体としては問題としていない。

         これは,本件サイトが,「交通事故問題の専門家である弁護士が対応

        すれば,ほとんどの場合において,弁護士が保険会社と交渉すること

        によって,賠償金を提示額より大きく受けられます。」(代表メッセー

        ジ)」ということ宣伝しているものであったため,債務者としては,無

        意識のうちに,「岡山県北有数のご相談・解決実績」という表示を,「大

        幅な賠償金の増額実績多数」という表示と重ね合わせ,岡山県北有数の

        賠償金の増額実績という趣旨に理解していたためである。

         たしかに,文言からいえば,「岡山県北有数のご相談・解決実績」と

        いう表示は,賠償金の増額を実現した場合に限らないものであり,弁

        護士法人西村綜合法律事務所が,交通事故の示談交渉について,「岡山

        県北有数のご相談・解決実績」を有し,「大幅な賠償金の増額実績多数」     

        を有するという表示を虚偽の表示とする懲戒請求書における債務者の

        主張は,同弁護士法人が交通事故事件について一定の実績を有するこ

        とを否定しているものと読むことも不可能ではなく,表現としては適正

        ではなかった。

         しかし,懲戒請求書における債務者の主張が,Bの事実を根拠とし

        てAの事実を主張しているものであって,弁護士法人西村綜合法律事

        務所が交通事故事件について一定の実績を有することを否定するもの

        ではないことは,通常の読解力を有する人間ならば理解できることで

        ある。

         債務者は,弁護士法人西村綜合法律事務所が交通事故事件について

        一定の実績を有することを否定するものではないことは,平成31年

        4月8日付主張書面において明言している。

       4 債務者の推論の正当性

         債務者が,懲戒請求書において,Bの事実を根拠として,Aの事実

        を主張した論理は以下のとおりである。

 

         1 債権者らは,平成29年8月頃,「津山の弁護士による交通事

          故・後遺障害(弁護士法人西村綜合法律事務所)」と題するイン

          タ―ネット上のサイトを開設し,同サイト上において,同弁護士

          法人が,交通事故の示談交渉について,「岡山県北有数のご相談・

          解決実績」を有し,「大幅な賠償金の増額実績多数」と有すると

          表示し,「最新」の「解決事例」として以下の7件を表示してい

          る。

           ① 任意自動車保険未加入だったものの,治療費や慰謝料の受

            取に成功した事例

           ② 右足首骨折で示談金750万円を受け取った事例

           ③ 後遺障害14級9号認定を獲得し,示談金額が160万円

            増額した事例

           ④ 後遺障害併合11級認定を獲得し,示談金額990万円増

            額した事例

           ⑤ 後遺症の事案

           ⑥ 死亡事故:約3か月の短期間交渉で約3330万円で相手

            方保険会社と和解した事例

           ⑦ 死亡の事案

           上記7件のうち,⑤,⑥は平成29年10月23日に,⑦は平

          成30年1月19日に「最新」の「解決事例」に追加されたもの

          であり,本件サイトが開設された時点で「最新」の「解決事例」

          として表示されていたのは,①ないし④の4件である。

         2 しかし,①ないし④の事件は,真実には,弁護士法人西村綜合

          法 律事務所が示談交渉を受任し,賠償金の増額を実現した事件

          ではなく,一法師が同弁護士法人の社員となる以前に東京の弁護

          士法人Astiaに勤務弁護士として在籍していた時期に関与した          

          事件である。

           弁護士法人西村綜合法律事務所が,交通事故の示談交渉につい

          て,「岡山県北有数のご相談・解決実績」を有し,「大幅な賠償

          金の増額実績多数」を有するのであれば,債権者は,本件サイト

          を開設するにあたり,当然にそれを「最新」の「解決事例」とし

          て表示したはずであり,一法師が同弁護士法人の社員となる以前

          に東京の法律事務所に勤務弁護士として在籍していた時期に関与

          した事件を「最新」の「解決事例」として表示しなければならな

          い理由はない。

           債権者らが,本件サイトを開設するにあたり,一法師が弁護士

          法人西村綜合法律事務所の社員となる以前に東京の法律事務所に

          勤務弁護士として在籍していた時期に関与した関与した4件の事

          件を「最新」の「解決事例」として表示しなければならなかった

          のは,同弁護士法人には,本件サイトを開設した時点で,交通事

          故の示談交渉について,大幅な賠償金の増額を実現したといえる

          解決事例は存在しなかったからである。

         3 債権者は,平成27年8月頃,一法師が東京の法律事務所に勤

          勤務弁護士として在籍していた時期に関与した①ないし④の事件を

          「最新」の「解決事例」として表示した本件サイトを開設した後,

          平成29年10月23日に⑤,⑥の事件を,平成30年1月19日

          に⑦の事件を「最新」の「解決事例」に追加したが,その後1年半

          以上が経過しているにもかかわらず,「最新」の「解決事例」の追

          加はない。

         4 したがって,弁護士法人西村綜合法律事務所に,交通事故の示

          談交渉について,大幅な賠償金の増額を実現したといえる解決事

          例が存在するとすれば,⑤ないし⑦の3件がそのすべてであると

          考えられる。

 

         上記のように,債務者が,懲戒請求書において,弁護士法人西村綜

        合法律事務所には,交通事故の示談交渉について,大幅な賠償金の増

        額を増額実現したといえる解決事例は僅かしか存在しないとし,同弁

        護士法人が,交通事故の示談交渉について,「岡山県北有数のご相談・

        解決実績」を有し,「大幅な賠償金の増額実績多数」を有するという

        表示を虚偽の表示としたのは,

         ① Bの事実から,債権者らが本件サイトを開設した時点では,同

          弁護士法人には,大幅な賠償金の増額を実現したといえる解決事

          例は存在しなかったと推論し,

         ② 本件サイトの開設の後,⑤ないし⑦の事件が「最新」の「解決事

          例」に追加されたが,その後1年半以上が経過しているにもかか

          わらず,「最新」の「解決事例」に追加がないという事実から,同

          弁護士法人に大幅な賠償金の増額を実現したといえる解決事例は

          ⑤ないし⑦以外には存在しないと推論している。

        ものである。

            上記①②の債務者の推論は,常識ある人間ならば誰でも首肯するも

        のであるのみならず,債権者らが本件仮処分手続に証拠として提出し

        た弁護士法人西村綜合法律事務所の交通事故事件についての資料も,

        債務者の推論が正当であったことを証明している。

         別紙解決事例一覧表は,債権者らが提出した証拠により弁護士法人

        西村綜合法律事務所の設立以来の交通事故事件の解決事例を復元した

        ものであり,それにより以下の事実を認めることができる。

        ⑴ 本件サイト開設の経緯

          債権者らが提出した証拠によれば,弁護士法人西村綜合法律事務

         所は,本件サイトを開設したのとほぼ同時期の平成29年7~8月

         に大幅な賠償金の増額を実現したといえる3件の事件を集中的に解

         決している。

          賠償金の増額の金額は,29の事件は3,646,781円,3

         1の事件は2,616,703円であり,30の事件については賠

         償金の増額の金額は不明であるが,支払額が34,000,000

         円であることからすれば,同事件も大幅な賠償金の増額を実現した

         といえる事件である。

          弁護士法人西村綜合法律事務所には,29ないし31の事件の以

         前に一定の賠償金の増額を実現した解決事例として,8,12,2

         0の事件が存在するが,その賠償金の増額の金額は,8の事件は

         1,007,901円,12の事件は762,550円,20の事

         件は1,449,544円6にすぎず,29ないし30の事件は,そ

         れ以前の同弁護士法人の解決事例と比較して著しく多額の賠償金の

         増額を実現した事件であった。

          弁護士法人西村綜合法律事務所が平成29年7,8月にそれ以前

         の同弁護士法人の解決事例と比較して著しく多額の賠償金の増額を

         実現した3件の事件を集中的に解決していることと,債権者らがそ

         れとほぼ同時期に同弁護士法人が,交通事故の示談交渉について,

         「大幅な賠償金の増額実績多数」を有すると宣伝する本件サイトを

         開設したこととは,おそらく無関係ではない。

          債権者らが,弁護士法人西村綜合法律事務所が,交通事故の示談

         交渉について,「大幅な賠償金の増額実績多数」を有すると宣伝す

         る本件サイトを開設したのは,当時同弁護士法人が受任していた2

         9ないし31の事件が,それ以前の同弁護士法人の解決事例と比較

         して著しく多額の賠償金の増額を実現することが予想されたことを

         契機とするものであり,本件サイトは,当初から29ないし31の

         事件を同弁護士法人の「大幅な賠償金の増額実績」として宣伝する

         ことを予定して開設されたものであったと考えられる。

          債務者は,これまで本件サイトの開設時期を「平成29年8月頃」

         としていた。

          これは,債務者が本件サイトの存在を認識したのがその頃だった

         ことによるものであるが,本件サイトの開設が平成29年8月なら

         ば,債権者らは本件サイトを開設した時点で29ないし31の事件

         を「最新」の「解決事例」として表示しているはずであるから,実

         際には,本件サイトの開設時期はそれより少し早い平成29年6,

         7月頃であり,本件サイトを開設した時点では,29ないし31の

         事件は,近い将来に解決することが予定されていたものの,いまだ

         解決はしていなかったものと考えられる。

        ⑵ 本件サイト開設時の「大幅な賠償金の増額実績」の有無

          債務者は,懲戒請求書において,Bの事実から本件サイトを開設

         した時点で弁護士法人西村綜合法律事務所には大幅な賠償金の増額

         を実現したといえる解決事例は存在しなかったと推論したのに対し

         て,債権者らは,同弁護士法人には,平成27年1月15日の開設

         以来,大幅な賠償金の増額を実現した解決事例は多数存在したと主

         張している。

          しかし,債権者らが,本件サイトの開設当時,29ないい31の

         事件以前に弁護士法人西村綜合法律事務所が一定の賠償金の増額を

         実現した8,12,20等の事件を,同弁護士法人が大幅な賠償金

         の増額を実現した解決事例をみなしていたのであれば,債権者らは,

         本件サイトの開設にあたり,8,12,20等の事件を「最新」の

         「解決事例」として表示したはずであるが,債権者らが,本件サイ

         トの開設にあたり,「最新」の「解決事例」として表示したのは,

         同弁護士法人が実際に示談交渉を受任した8,12,20等の事件

         ではなく,一法師が平成27年2月18日に勤務弁護士として在籍

         していた時期に関与した「4件の事件」なのである。

          債権者らが,本件サイトの開設にあたり,弁護士法人西村綜合法

         律事務所が実際に示談交渉を受任した8,12,20等の事件を「

         最新」の「解決事例」として表示するのではなく,「4件の事件」

         を「最新」の「解決事例」として表示したのは,本件サイトの性格

         に由来する。

          前記のように,債権者らが,弁護士法人西村綜合法律事務所が,

         交通事故の示談交渉について,「大幅な賠償金の増額実績多数」を

         有すると宣伝する本件サイトを開設したのは,当時同弁護士法人が

         受任していた29ないし31の事件が,それ以前の同弁護士法人の

         解決事例と比較して著しく多額の賠償金の増額を実現することが予

         想されたことを契機とするものであり,本件サイトは,当初から2

         9ないし31の事件を同弁護士法人の「大幅な賠償金の増額実績」

         として宣伝することを予定して開設されたものであると考えられる。

          しかし,おそらく本件サイトを開設した時点では29ないし31

         の事件は未解決であったため,直ちにそれを「最新」の「解決事例」

         として表示することはできず,また,将来解決しても,それだけで

         は「大幅な賠償金の増額実績多数」として宣伝するには件数が不足

         であった。

          そのため,債権者らとしては,本件サイトの開設にあたり,

          ① 29ないし31の事件を「最新」の「解決事例」として表示

           することができるまでのつなぎ

          ② 「解決事例」の件数の水増し

         のために,「解決事例」として表示する事件が必要であったが,2

         9なし31の事件の以前に弁護士法人西村綜合法律事務所が実際

         に受任した8,12,20等の事件は,一定の賠償金の増額を実現

         したといっても,賠償金の増額した金額は29ないし31の事件に

         比較すれば少額であり,29ないし31の事件とともに同弁護士法

         人の「大幅な賠償金の増額実績」として宣伝するにはふさわしいも

         のではなかった。

          これに対し,「4件の事件」は,①は別としても,②は賠償金の

         増額した金額は不明であるが,支払額は7,500,000円,③

         の賠償金の増額の金額は1,600,000円,④は9,000,

         000円であり,総じて,法人西村綜合法律事務所が実際に受任し

         た8,12,20等の事件より多額の賠償金の増額を実現しており,

         29ないし31の事件とともに同弁護士法人の「大幅な賠償金の増

         額実績」として宣伝せするのにふさわしいものであった。

          債権者らが,本件サイトの開設にあたり,弁護士法人西村綜合法

         律事務所が実際に示談交渉を受任した8,12,20等の事件を「最

         新」の「解決事例」として表示するのではなく,一法師が平成27

         年2月18日に同弁護士法人の社員となる以前に東京の弁護士法人

         法律事務所Astiaに勤務弁護士として在籍していた時期に関与した

         「4件の事件」を「最新」の「解決事例」として表示するという,

         サギ師同然の行為を行ったのは,おそらく上記のような理由に基づ

         くものである。

          すなわち,本件サイトの開設当時,弁護士法人西村綜合法律事務所

         に一定の賠償金の増額を実現した事例が存在したとしても,それは,

         債権者らの認識では,「4件の事件」と比較すれば,大幅な賠償金の

         増額を実現したといえる解決事例といえるものではなかったのであ

         る。

          債権者が,懲戒請求書において,Bの事実から,本件サイトの開設

         の時点で,弁護士法人西村綜合法律事務所には大幅な賠償金の増額

         を実現したといえる事例は存在しなかったという事実を推論したこ

         とが正当であったことは,上記のように債権者らが提出した証拠に

         よっても証明することができる。

        ⑶ 本件サイト開設後の「大幅な賠償金の増額実績」の有無

          債権者らは,弁護士法人西村綜合法律事務所が平成29年7,8

         月に集中的に解決した29ないし31の事件のうち,29,30の

         事件については同年10月23日に⑤,⑥の事件として「最新」の

         「解決事例」に追加したが,31の事件は「最新」の「解決事例」

         に追加することはなかった。

          債権者らが,弁護士法人西村綜合法律事務所が,交通事故の示談交

         渉について,「大幅な賠償金の増額実績多数」を有すると宣伝する本

         件サイトを開設したのは,当時同弁護士法人が受任していた29な

         いし31の事件が,それまでの同弁護士法人の解決事例と比較して

         多額の賠償金の増額を実現することが予想されたことを契機とする

         ものであり,本件サイトは,当初から29ないし31の事件を同弁護

         士法人の「大幅な賠償金の増額実績」として宣伝することを予定して

         開設されたものであったと考えられるにもかかわらず,債権者らが,

         最終的には,29,30の事件のみを「最新」の「解決事例」に追

         加し,31の事件は「最新」の「解決事例」に追加しなかった理由

         は不明であるが,おそらく,31の事件は,29,30の事件に比

         較して賠償金の増額の金額は少なかったことがその理由であると考

         える。

          債権者は,その後,平成30年1月19日に38の事件を⑦の事件

         として「最新」の「解決事例」に追加したのみで,それ以降,「最新」

         の「解決事例」の追加はない。

          債務者は,懲戒請求書において,⑤ないし⑦の事件を「最新」の「解

         決事例」に追加した後,1年半以上が経過しているにもかかわらず,

         「最新」の「解決事例」の追加がないことから,弁護士法人西村綜合

         法律事務所には大幅な賠償金の増額を実現した解決事例は⑤ないし

         ⑦の3件以外には存在しないと推論したのに対し, 債権者らは,同弁

         護士法人には本件サイトに掲載しなかった大幅な賠償金の増額を実

         現した解決事例は多数存在するとし,それを本件サイトに解決しな

         かったのは,本件サイトを定期的に更新しなかったからにすぎない

         と主張している。

          しかし,

          ① 債権者らは,平成29年7,8月の同時期に解決した29ない

           し31の事件のうち,29,30の事件については平成29年1

           0月23日に「最新」の「解決事例」に追加しているにもかか

           わらず,賠償金の増額の金額が少ない31の事件については「最

           新」の「解決事例」に追加していないこと

          ② 債権者らは,平成30年1月19日に38の事件を「最新」の

           「解決事例」に追加しているが,38の事件の賠償金の増額の金

           額は29の事件の賠償金の増額の金額とほぼ一致していること

         からすれば,弁護士法人西村綜合法律事務所が一定の賠償金の増額

         を実現した解決事例を本件サイトに「最新」の「解決事例」として

         表示するには債権者らなりの基準があり,29,30の事件と同程

         度の賠償金の増額を実現することが,本件サイトに「最新」の「解

         決事例」として表示する基準であったと考えられる。

          債権者らが提出した証拠によれば,弁護士法人西村綜合法律事務

         所には,⑤ないし⑦の事件を「最新」の「解決事例」に追加した後に

         一定の賠償金の増額を実現した事件として,45,49,51,52,

         56,59の事件が存在するが,9,585,104円の賠償金の増

         額を実現した45の事件を除けば,その賠償金の増額の金額は,⑤な

         いし⑦の事件と比較すれば少額である。

          したがって,債権者らが,⑤ないし⑦の事件を「最新」の「解決事

         例」に追加した後,1年半以上にわたり,「最新」の「解決事例」の

         追加を行わなかったのは,おそらく,その間,弁護士法人西村綜合法

         律事務所には,45の事件を除き,⑤ないし⑦の事件と同程度の大幅

         な賠償金の増額を実現した解決事例は存在しなかったことを理由と

         するものである。

          債務者が,懲戒請求書において,⑤ないし⑦の事件の「最新」の「解 

         決事例」への追加の後,1年半以上が経過しているにもかかわらず,

         本件サイトに「最新」の「解決事例」の追加がないという事実から,

         同弁護士法人には大幅な賠償金の増額を実現したといえる解決事例

         は⑤ないし⑦の3件以外に存在しないと推論したことは,⑤ないし

         ⑦の事件以上の大幅な賠償金の増額を実現しながら,「最新」の「解

         決事例」として表示されていない45の事件が存在していた限りで

         は正当ではなかったが,基本的には誤りではなかったものと考える。

                                    以 上