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            株式会社山本工務店の「架空工事」の計上による不当利得を認定した判決 

 

                    岡山地裁平成27年(レ)第143号請負代金請求事件

            

 

     平成28年7月13日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

     平成27年(レ)第143号請負代金請求控訴事件(原審・津山簡易裁判所平成 

     26年(ハ)第274号)

     口頭弁論終結日 平成28年4月20日

                   判       決

        岡山県津山市横山399番地1 

           控訴人(原審原告)    株  式  会 社  山 本 工 務 店

           同代表者代表取締役    山   本       喬

           同訴訟代理人弁護士    西    村    啓   聡

                        一  法 師    拓   也

        岡山県津山市○○○○○○○○

           被控訴人(原審被告)           X

           同訴訟代理人弁護士    黒         田         彬

                   主       文  

       1 原判決を次のとおり変更する。

       2 被控訴人は,控訴人に対し,48万0496円及びこれに対する平成2  

        6年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

       3 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。

       4 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを100分し,その15を控訴人

        の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。

       5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

                    事実及び理由

    第1 控訴の趣旨

     1 原判決を次のとおり変更する。

     2 被控訴人は,控訴人に対し,55万円及びこれに対する平成25年11月3 

      日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

                    3   被控訴人は,控訴人に対し,1万8360円及びこれに対する平成26年5

      月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

    第2 事実の概要

     1  本件は,被控訴人から被控訴人宅の新築工事並びにバルコニー設置工事(以

      下,バルコニー設置工事を「本件工事」という。)及びエコキュート修理工事

      (以下「追加工事」という。)を請け負った控訴人が,被控訴人に対し,①本

      件工事の目的物を完成させて引渡しを終えたとして,本件工事に係る請負契約

      に基づき,残代金55万円及びこれに対する目的物引渡し日の翌日から支払済

      みまでの民法所定の遅延損害金の支払を求めるとともに,②追加工事の目的物

      を完成させたとして,追加工事に係る請負契約に基づき,代金1万8360円

      及びこれに対する目的物完成の日の翌日から支払済みまでの民法所定の遅延損

      害金の支払を求める事案である。

       これに対し,被控訴人は,本件工事の瑕疵を理由とする損害賠償請求権及び

      新築工事費用の水増し計上を理由とする不当利得返還請求権による相殺を主張

      している。

       原審は,上記各請負契約に基づく代金請求権については,被控訴人の主張す 

      る上記相殺により消滅したと判断して,控訴人の請求をいずれも棄却した。

       これに対し,控訴人が本件控訴を提起した。

     2 前提となる事実(証拠等により認定した事実はその証拠等を付記する。証拠

      等の付記のない事実は当事者間に争いがない。)

      ⑴ 当事者等

       ア 控訴人は,建築工事請負等を業とする会社である。

       イ 被控訴人は,後記新築工事,本件工事及び追加工事を控訴人に注文した

        者である。

       ウ A(以下「A」という。)は,被控訴人の妻である。

        ⑵ 被控訴人宅の新築工事の受注と施工(甲7)

       ア 控訴人は,平成20年2月11日,被控訴人から被控訴人宅の新築工事

        (以下「新築工事」という。)を代金1800万3000円で請け負っ

         た。

       イ 控訴人は,同年7月26日,新築工事の目的物(以下「新築建物」とい

        う。)を完成させ,被控訴人に引き渡した。

         被控訴人は,同日頃,控訴人に対し,新築工事の代金として1800万

        3000円を支払った。

       ウ 新築工事の請負契約に係る見積書 (乙3。以下「新築見積書」とい  

        う。)には,「AW-8半外付引違サッシ(網戸付)畳ルーム」(単価2万

        9570円)(以下「本件サッシ」という。)が3個,「AW-12堅すべ

        出し(網戸付)子供室(南)」(単価2万4540円)(以下「本件すべ

        り出し」という。)が1個計上されていたが,一方,新築工事の設計図

        (乙4。以下「新築設計図」という。)には,本件サッシは1個しか記載

        されておらず,また,本件すべり出しは記載がなかった。そして,控訴人

        は,実際にも本件サッシ2個及び本件すべり出し1個分の工事を行ってい

        ない(以下,この工事を「本件架空工事」という。)。

      ⑶ 本件工事の受注と施工(甲5)

       ア 控訴人は,平成25年9月12日,被控訴人から本件工事を代金159

        万円で請け負った。

       イ 本件工事において,バルコニーはYKKAP株式会社の商品である「エ

        アキューブ」を使用することとなっていた。

         エアキューブは,建物の2階にバルコニーを設置するとともに,1階部

        分の空間を有効利用することを目的として開発された商品であるが,1階

        部分に雨水やしずくがたれることは商品の特質として避けられないもので   

        あった(以下,このエアキューブの特質を「本件特質」という。)。

       ウ 控訴人は,被控訴人との間で,同年10月16日,本件工事の代金を1

        55万円に減額する旨の合意をした。

       エ 控訴人は,平成25年11月2日,本件工事を完成させ,被控訴人に引  

        き渡した。   

         被控訴人は,控訴人に対し,同日,本件工事の代金として155万円を

        支払った。

       オ 本件工事によって完成されたバルコニー(以下「本件バルコニー」とい

        う。)は1階部分に雨漏りが生じるものであった(以下,本件バルコニー

        の1階部分の雨漏りを「本件雨漏り」という。)

       カ 控訴人は,被控訴人に対し,同月11日,被控訴人から支払われた本件

        工事の代金を155万円を一旦返還した。

       キ 控訴人は,同月3日以降,複数回に渡って,本件雨漏りについての補修

        工事を無償で行った。

      ⑷ 追加工事の受注と施工(甲5)

       ア 控訴人は,平成26年5月12日頃,被控訴人から追加工事を代金1万   

        8360円で請け負った。

         イ 控訴人は,同月14日,追加工事の目的物を完成させた。

      ⑸ 控訴人による代金支払請求及び被控訴人による代金の一部の支払 

       ア 控訴人は,被控訴人に対し,平成26年6月5日付けの「通知書」と題

        する文書(甲4)により,支払期限を同文書の到達の日の2週間後とした   

        上で,本件工事の代金155万円及び追加工事の代金1万8360円並び

        にこれらに対する遅延損害金の支払を求めた。

       イ 被控訴人は,上記控訴人からの請求を受け,控訴人に対し,平成26年

        6月18日,上記各工事代金のの合計の156万8360円の一部とし 

        て,100万円を支払い,控訴人は,これを本件工事における代金債務に

        充当した。

      ⑹ 被控訴人による相殺の意思表示

        被控訴人は,原審の第1回口頭弁論期日(平成27年1月13日)におい

       て,被控訴人の控訴人に対する瑕疵修補に代わる損害賠償請求権53万13

       60円及び架空工事による過払工事代金の不当利得返還請求権8万7864

       円を自動債権として,控訴人の被控訴人に対する請負契約に基づく本件工事

       の残代金55万円の支払請求権(以下「本件工事代金債権」といい,これに

       対応する債務を「本件工事代金債務」という。)及び追加工事の代金1万8

       360円の支払請求権(以下「追加工事代金債権」といい,これに対応する

       債務を「追加工事代金債務」という。また,本件工事代金債権と追加工事代

       金債権とをあわせて「本件各工事代金債権」という。)と対当額で相殺する

       旨の意思表示をした。

     3 争点及び当事者の主張

       本件の争点は,被控訴人の主張する相殺の自動債権の成否である。

      ⑴ 被控訴人の控訴人に対する瑕疵修補に代わる損害賠償請求権の有無(特 

       に,本件工事に係る請負契約において,1階部分に雨漏りが生じないように

       することが契約の内容になっていたか否か。)

      【被控訴人の主張】

        Aは,本件工事に係る請負契約の締結前において,控訴人の従業員であるB 

       (以下「B」という。)に対し,本件バルコニーの1階部分をバイク置場として

         利用する予定であると伝えていたこと,控訴人は,Aから本件雨漏りについて

       の補修工事を無償で行うとともに,支払いを受けていた本件工事の代金15

       5万円を被控訴人に返還したこと,被控訴人及びAはBから本件特質について

       の説明を受けていないことなどからすると,本件工事に係る請負契約におい

       て,1階部分に雨漏りが生じないようにすることが契約の内容になっていた

       というべきである。

        そうすると,本件雨漏りが生じている以上,本件バルコニーには瑕疵があ

       るといえる。

        そして,被控訴人は,上記瑕疵により少なくとも53万1360円の損害

       を被ったのであるから,被控訴人は,控訴人に対し,瑕疵修補に代わる53

       万1360円の損害賠償請求権を有しており,同損害賠償請求権と本件各工 

       事代金債権とを対等額で相殺する。

       【控訴人の主張】

        控訴人は,被控訴人に対し,本件特質についての記載のあるカタログ(甲 

       8)を交付しており,被控訴人は本件工事に係る請負契約締結時において本件

       特質について認識していたのであるから,本件工事に係る請負契約におい

       て,1階部分に雨漏りが生じないようにすることが契約の内容になっていた

       とはいえない。

        バイクは必ずしも雨に濡れてはいけない物ではない。また,控訴人が,Aか

       ら本件雨漏りについて苦情を受けた後,複数回に渡って本件雨漏りについて

       の補修工事を無償で行うとともに,支払いを受けていた本件工事の代金15

       5万円を被控訴人に返還したのは,これまでのAからの度重なるクレームに対

       応するためである。被控訴人主張の事実をもって,本件工事に係る請負契約

       において,1階部分に雨漏りが生じないようにすることが契約の内容となっ

       ていたとはいえない。

        そうすると,本件雨漏りが生じていることをもって本件バルコニーに瑕疵

       があるとはいえず,被控訴人は,控訴人に対し,瑕疵修補に代わる損害賠償

       請求権を有していない。

      ⑵ 被控訴人の控訴人に対する不当利得返還請求権の有無

      【被控訴人の主張】

        控訴人は,被控訴人に対し,新築設計図に記載の無い工事(本件サッシ2

       個分及び本件すべり出し1個分)を新築見積書に計上した上で工事代金を請

       求した。本件サッシ2個及び本件すべり出し1個の単価の合計は8万786

       4円である。したがって,被控訴人が控訴人に対して支払った新築工事代金

       1800万3000円のうち少なくとも8万7864円は対応する工事のな

       い支払であり,控訴人は同金員を不当に利得しているといえる。

        よって,被控訴人は,控訴人に対し,不当利得に基づく8万7864円の

       返還請求権を有しており,同不当利得返還請求権と本件各工事代金債権とを

       対当額で相殺する。

      【控訴人の主張】

        控訴人は,Aに対し,新築設計図と新築見積書を交付し,見積書と設計図に

       において異なる点については別の工事をすることにより最終的に金額を調整

       する旨説明した。その上で,控訴人は,新築工事において,新築見積書に計

       上していない工事を複数行い,新築見積書に比して実際に施工された工事代

       金は26万1144円増加した。そして,控訴人が被控訴人に対し本件建物

       を引き渡す際,見積書に記載されていない工事を行っていることを説明し,

       同意を得た上で引受書(甲7)の交付を受けた。以上から,被控訴人は,本

       件架空工事と他の工事とをあわせて金額調整をすることについて同意してお

       り,実際に本件架空工事に相当する代金の対価となる工事を行ったのである

       から,控訴人の8万7864円の利得は法律上の原因がないとはいえない。

             第3 当裁判所の判断

     1 争点⑴(被控訴人の控訴人に対する瑕疵修補に代わる損害賠償請求権の有無

      -特に,本件工事に係る請負契約において,1階部分に雨漏りが生じないよう

      にすることが契約の内容になっていたか否か)について

      ⑴ 前記前提となる事実のほか,証拠(甲5,9,12,13,乙5,21) 

      及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

       ア 本件バルコニーの1階部分の構造は,3面は壁で覆われているものの,

                               他の1面には壁が存在しない。

       イ 新築建物の状況並びに控訴人及びAの対応等

       (ア)控訴人が被控訴人に新築建物を引き渡した日である平成20年7月2

         6日から数か月後,新築建物のサッシに結露が生じたため,Aは,控訴

         人に対し,サッシの結露に対応して欲しい旨の連絡をした。同要求は,

         平成22年頃まで続いた。 

          控訴人は,平成22年頃,Aの要求に対応するため,無償で,新築建物

         に24時間換気設備をした。

       (イ)新築建物の引渡し後,新築建物のクロスにひび割れ等が生じたため,

         Aは,控訴人に対し,クロスのひび割れ等に対応して欲しい旨の連絡をし

         た。同要求は平成24年が経過しても止むことはなかった。

          控訴人は,Aの要求に対応するため,複数回に渡って,無償で,クロス

         の張り替え等をした。

       ウ 本件雨漏りに対する控訴人並びに被控訴人及びAの対応等

       (ア)Aが,控訴人に対し,平成25年11月3日,本件雨漏りが生じた旨連

         絡をしたところ,控訴人は,同日,本件雨漏りに関し,仮養生を行っ

         た。

       (イ)控訴人は,同月4日,本件雨漏りに関し,補修工事を行った。

       (ウ)控訴人は,同月7日,本件雨漏りに関し,アルミ庇の取付け,内部カ

         -テン紐等の補修を行った。

       (エ)Aは,控訴人に対し,同月10日,本件雨漏りが続いていたため,その

         旨を連絡した。その際,Aは,控訴人に対し,本件工事の代金の返金を求

         める趣旨の発言をした。

       (オ)控訴人は,同月11日,被控訴人に対し,被控訴人から支払われた本

         件工事代金155万円を返還するとととに,本件雨漏りに関し,補修工

         事を行った。

       (カ)控訴人は,同月12日,本件雨漏りに関し,L型見切りを取り外し,補

         修工事王を行った。

       (キ)控訴人は,同月16日,Aが控訴人に対し,コーキングが汚い,色が気

         に入らない等と述べたため,コーキングの補修工事を行った。

       (ク)控訴人は,同月18日及び同月19日,本件雨漏りに関し,補修工事

         を行った。

      ⑵ そもそもエアキューブは,建物に付設して空間バルコニーを形成すること

       を主たる目的とするものであり,エアキューブの本件特質からしても,その

       床部分は当然にその下の空間(1階部分)の屋根や雨よけとして使用される

       ことを想定したものとは認められない。この点は,エアキューブのカタログ

       (甲8)にも明記されているところである。エアキューブの床下の空間(1

       階部分)が事実上駐車場や物置などとして利用されることが通例であるとし

       ても,それはあくまでもデッドスペースの有効利用策としてのものであると

       いえ,1階部分について完全に雨水などを遮蔽する収納スペースとしての利

       用を想定するのであれば,単にエアキューブを設置するのみならず,これに

       加えて,雨水などを遮蔽するための相応の追加工事(防水工事)を必要とす

       るものである。したがって,バルコニー設置のための本件工事について,エ

       アキューブを採用することが契約当事者間で合意された以上,双方間に,こ

       れに加えて必要な防水工事を行う旨の合意が成立しない限り,請負人である

       控訴人としては,当然に本件バルコニーの床下部分(1階部分)のための防

       水工事を施工する義務を負うものとはいえない。

        そこで,以下,被控訴人の主張する事実等から,本件バルコニーの1階部

       分に雨漏りを生じさせないような施工を行うことが契約当事者間で合意され

       たと認定できるかについて判断する。

       ア 被控訴人は,AがBに対して本件バルコニーの1階部分をバイク置場とし

        て利用する予定であると伝えていたところから,控訴人は被控訴人が本件

        バルコニーの1階部分が雨で濡れないようにしてほしいとの希望をもって

        いたこたが分かっていたと主張する。

         しかし,バイクは,その性質上雨天に走行することも当然に想定されて

        いるものであるから,そもそも必ずしも雨に濡れてはいけないものでなく

        ,上記⑴アのとおり,本件バルコニーの1階部分の1面は壁がなく,雨風

        が入る構造であったことを考えると,被控訴人が本件バルコニーの1階部

        分バイク置場として利用することを前提に,この部分が雨で濡れないよう

        にしてほしいとの希望を持っていたとしても,控訴人がそのことを認識し

        ていたと認めることはできない。

       イ 次に,被控訴人は,控訴人が,Aから本件雨漏りについての苦情を受けた

        後,複数回に渡って本件雨漏りについての補修工事を無償で行うとともに

        支払を受けていた本件工事の代金155万円を被控訴人に返還したことに

        ついて,これらの行動は,被控訴人が本件雨漏りを本件工事に係る瑕疵で    

        あると認識しているからこその行動であり,本件工事に係る請負契約にお

        いて,1階部分に雨漏りが生じないようにすることが契約の内容になって

        いたのでなければならない行動である旨主張する。

         一方,控訴人は,複数回に渡って本件雨漏りについての補修工事を無償

        で行うとともに,支払を受けていた本件工事の代金155万円を被控訴人

        に返還したのは,これまでのAからの度重なるクレームに対応するためであ

        る旨主張し,Bはこの主張に沿う供述をする(甲9,12)。

         そこで検討するに,サッシの結露への対応の要求(上記⑴イ(ア))に

        ついては,サッシの結露は通常建築業者に対し当然にその対応と要求し得

        るものとはいえないことに加え,Aがこのような要求を約2年以上続け,結

        果として無償で換気設備を設置するに至っていることを考えると,Aのこれ

        らの要求は通常注文者側が建築業者に対してする要求の程度をはるかに超

        えるものであったことがうかがわれる。また,クロスのひび割れ(上記⑴

        イ(イ))については,確かに建築業者に一定の対応を要求すること自体

        は一般に考えられるところであるが,同様の要求を平成24年を過ぎても

        続け,結果として控訴人が複数回に渡って無償でクロスの張り替え等をし

        たことを考えると,Aのこれらの要求も通常建築業者に行われる限度を超え

        ていたであろうことは優に推認できるところである。このような状況の中

        で,上記⑴ウのとおり,控訴人は,Aから,本件雨漏りに対応して欲しい旨

        の度重なる要求を受けるとともに,本件工事代金の返金を求められたので

        あり,控訴人としては,通常の対応をもってAの要求が止むことはないと考

        え,ひとまず本件工事代金を返還するとともに,契約上の義務でないとし

        ても,本件雨漏りに対するできる限りの対応をとることを選択したとして

        も,不自然とはいえない。これについて,被控訴人は,何ら控訴人に落ち

        度がないにも関わらず複数回に渡って補修工事をすることはおよそ考えら

        れない行動である旨を主張するが,控訴人は,上記のとおり,Aの要求に対

        し,本来は控訴人の義務とは言い難い換気設備の設置を無償で行っている

        のであり,本件雨漏りについても,控訴人の義務ではないものの,Aの要求

        に対応するために補修工事を行ったということは十分あり得るところであ

        る。

         そうすると,控訴人が,Aから本件雨漏りについての苦情を受けた後,

        複数回に渡って本件雨漏りについての補修工事を無償で行うとともに,支

        払を受けていた本件工事の代金155万円を被控訴人に返還したことをも

        って,直ちに,本件工事に係る請負契約において,1階部分に雨漏りが生

        じないようにすることが契約の内容となっていたことを認めることはでき

        なというべきである。

       ウ また,仮にAがBから本件特質についての具体的な説明を受けていないと

        しても,被控訴人側は,エアキューブのカタログを示された上でこれを選

        択したものであり,本件工事に係る請負契約において,1階部分に雨漏り

        が生じないようにすることが契約の内容になっていたと認めることは到底

        できない。

       エ 以上のとおり,被控訴人の主張する事実をもって,本件工事に係る請負

        契約において,1階部分に雨漏りが生じないようにすることが契約の内容

        になっていたと認めることはできなというべきである。上記のとおり,完

        全な防水のためには,エアキューブの設置に加えて特別の追加工事を要す

        ることからすればなおさらである。その他これを認めるに足りる事情ない

        し証拠もない。

      ⑶ よって,本件雨漏りが生じていることをもって本件バルコニーに瑕疵があ

       るとは認められず,被控訴人の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権

       とする相殺の主張は理由がない。

     2 争点⑵(被控訴人の控訴人に対する不当利得返還請求権の有無)について

      ⑴ 前記前提となる事実のほか,証拠(甲6,9,12,13,乙3,4,2

       1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

       ア 新築設計図及び新築見積書の作成

       (ア)控訴人は,平成20年1月31日,新築設計図を作成した。

       (イ)控訴人は,同年2月11日,新築見積書を作成した。

       イ 新築工事の実質的な工事代金の増加

         控訴人は,新築工事において,新築見積書に計上していない工事を複数

        行い,新築見積書に比して実際に施工された工事に相当する工事代金は2

        6万1144円増加した。

       ウ 新築工事代金の値引き合意

         控訴人は,被控訴人との間で,新築建物をモデルルームとして一般市民

        に公開する「モニターハウス」と称するイベントを開催することや,広告

        に新築建物を載せることに協力してもらう代わりに,「イベント協賛値引

        き」と言う形で工事代金全体から値引きする旨の合意をした。

      ⑵ 前記前提となる事実⑵ウのとおり,本件架空工事の存在が認められるとこ

       ろ,これに対応する工事単価の合計が8万7864円(税込)であることか

       らすると,被控訴人が控訴人に対して支払った新築工事代金1800万30

       00円のうち8万7864円は対応する反対給付のない支払であるといえ,   

       同支払は法律上の原因がないものと認められる。

        この点,控訴人は,被控訴人は,本件架空工事と他の工事とを合わせて金

       額調整をすることについて同意しており,実際に本件架空工事に相当する代

       金の対価となる工事を行ったのであるから,8万7864円の利得は法律上

       の原因がないとはいえない旨主張する。

        そこで検討するに,上記⑴アのとおり,控訴人は,新築設計図を作成した

       後に,新築設計図に記載されていない本件架空工事を計上した新築見積書を

       作成している。これは,控訴人が主張するように,新築設計図を作成する前

       に見積書を作成していたところ,新築設計図の作成後に,以前の見積書の日

       付を変更して新築見積書を完成させたと考えるのが合理的であるが,そうだ

       とすると,控訴人が本件架空工事の計上を削除した見積書を新たに作成しな

       かったのは,後に他の工事をすることで金額調整をするつもりであったため  

       であると考えられなくもない。そして,上記⑴イのとおり,新築見積書に比

       して実際に施工された工事に相当する工事代金は26万1144円増加した

       ことが認められる。

        しかし,上記⑴ウのとおり,控訴人と被控訴人との間で,「イベント協賛    

       値引き」という形で工事代金全体から値引きする旨の合意をしたことが認め

       られるところ,Aは,この値引きは,新築設計書に計上されていない工事代

       金についての値引き(上記⑴イの工事代金についての値引き)であると認識

       していた旨供述しており(乙21),また,被控訴人及びAが平成25年1

       1月22日になって初めて本件架空工事の存在に気が付いたこと(甲5,乙

       21)も考慮すれば,少なくとも,被控訴人において,本件架空工事と他の

       工事とを合わせて金額調整することについて同意していたとは認められない

       というべきである。

        被控訴人が控訴人に対し引受書(甲7)を交付した事実についても,前述

       のように被控訴人及び雅子が平成25年11月22日になって初めて本件架

       空工事の存在に気が付いたことからすれば,この事実をもって,被控訴人が

       本件架空工事と他の工事とを合わせて金額調整したと認識していたと認める

       ことはできない。

        以上から,被控訴人において,本件架空工事に相当する代金が他の工事の

       代金であると認識していたと認められず,控訴人が本件架空工事の代金額に

       対応する反対給付をした事実は認定できないというべきであり,控訴人の8

       万7864円の利得は法律上の原因がなく,控訴人の上記主張は理由がな

       い。

      ⑶ よって,被控訴人は,控訴人に対し,不当利得に基づく8万7864円の

       返還請求権を有しているといえ,被控訴人の同不当利得返還請求権に係る相

       殺の主張は理由がある。

     3 相殺の充当について

      ⑴ 本件において,被控訴人の相殺の主張は,被控訴人の控訴人に対する不当

       利得に基づく8万7864円の返還請求権を自働債権とするものに限り理由

       があると認められるところ,被控訴人は,原審の第1回口頭弁論期日(平成

       27年1月13日)において,同請求権を自働債権として本件各工事代金債

       権の2口の債権と対当額で相殺する旨の意思表示をしたが,同意思表示にお

       いては相殺の目的となる受働債権の指定がなされておらず,また,相手方た

       る控訴人もそのような主張はしていない。このように自働債権又は受働債権

       として数個の元本債権があり,相殺の意思表示をした者もその相手方も同数

       個の元本債権につき相殺の順序の指定をしなかった場合における元本債権相

       互間の相殺の順序については,民法512条,489条の規定の趣旨に則り

       ,元本債権が相に供しうる状態となるにいたった時期の順に従うべきである

       (最高裁判所昭和55年(オ)396号昭和56年7月2日第1小法廷判決

       ・民集35巻5号881頁参照。)。

      ⑵ 本件工事代金債務の弁済期について

        前記前提となる事実⑶エ及びカのとおり,控訴人は,被控訴人が支払った

       本件工事の代金155万円を返還しているところ,この行為は,本件工事代

       金債務の弁済期を延期する趣旨のものであると考えるのが合理的である。そ

       うすると,この返還行為により,本件工事代金債務は期限の定めのない債務 

       になったというべきであるところ,前記前提となる事実⑸アのとおり,控訴

       人は,被控訴人に対し,平成26年6月5日付けの「通知書」と題する文書

       (甲4)により,支払期限を同文書の到達の日の2週間後とした上で,本件

       工事の代金155万円及び追加工事の代金1万8360円並びにこれらに対

       する遅延損害金の支払を求めたのであるから(なお,同日において本件工事

       の代金について遅延損害金は未発生だった。),本件工事代金債務の弁済期

       は,同文書が被控訴人に到達した日の2週間後であると認められる。そして

       ,本件において,同文書が被控訴人に到達した日を裏付ける証拠は存在しな

       いところ,前記前提となる事実⑸イのとおり,被控訴人は,上記控訴人から

       の請求を受け,控訴人に対し,平成26年6月18に工事代金の一部を支払

       っていることから,遅くとも同日には同文書が被控訴人に到達したと認めら

       れる。したがって,本件において,本件工事代金債務の弁済期は,同日の2

       週間後である同年7月2日であるというべきである。

      ⑶ 追加工事代金債務の弁済期について

        追加工事代金債務の弁済期は,追加工事の目的物の完成の日である平成2

       6年5月14日である。兼

      ⑷ 被控訴人の控訴人に対する上記不当利得返還請求権に係る弁済期について   

        被控訴人の控訴人に対する上記不当利得返還請求権に係る弁済期は,被控

       訴人が控訴人に対し新築工事代金を支払った平成20年7月26日頃である

       (前記前提となる事実⑵イ)。

      ⑸ 以上から,最初に相殺適状になるのは自働債権たる上記不当利得返還請求

       権と受働債権たる追加工事代金債権であるから,両者を対当額で相殺すると    

       ,相殺適状を生じた平成26年5月14日において,追加工事代金債権は消

       滅し,上記不当利得返還請求権の残額は6万9504円となる。そして,次

       に自働債権たる上記不当利得返還請求権の上記残部と本件工事代金債権とが  

       対当額で相殺され,相殺適状を生じた同年7月2日において,上記不当利得

       返還請求権の上記残部は消滅し,本件工事代金債権の残額は48万0496

       円となる。

     4 以上によれば,控訴人の請求のうち,本件工事の残代金のうちの48万04

      96円及びこれに対する弁済期の翌日である平成26年7月3日から支払済み

      までの民法所定の遅延損害金の支払を求める部分については理由があるからこ

      れを認容し,その余の部分は理由がないからこれらをいずれもう棄却するもの

      である。

       そうすると,上記と異なり,控訴人の請求を全部棄却した原判決は相当でな  

      く,本件控訴は一部理由があるから,原判決を変更することとして,主文のと

      おり判決する。

          岡山地方裁判所第2民事部

            

            裁判長裁判官  曳   野   久   男

 

               裁判官  早   田   久   子

 

               裁判官  宮   田   裕   平

 

     (原判決)

   

    平成27年11月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

    平成26年(ハ)第274号請負代金請求事件

    口頭弁論終結日 平成27年9月15日

                判       決

      岡山県津山市横山399番地1

           原        告   株  式  会  社  山 本 工 務 店

          上記代表者代表取締役  山     本        喬

          上記訴訟代理人弁護士  西     村   啓    聡

          同           一 法 師     拓    也 

      岡山県津山市○○○○○○○○      

          被        告         X

          上記訴訟代理人弁護士  黒   田       彬

                主        文

    1 原告の請求をいずれも棄却する。 

    2 訴訟費用は原告の負担とする。

                  事実及び理由

    第1 請求

     1 被告は,原告に対し,55万円及びこれに対する平成25年11月3日から   

      支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

     2 被告は,原告に対し,1万8360円及びこれに対する平成26年5月15 

      日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

     3 訴訟費用は被告の負担とする。

    第2 事案の概要

     1 本件は,被告から被告宅のバルコニー建築工事(以下「本件工事」という。

      )及びエコキュート修理工事(以下「追加工事」という。)を請け負った原告 

      が,各工事を完成させて引渡しを終えたとして,各請負契約に基づき,本件工 

      事の残代金55万円及び追加塚工事代金1万8360円,並びにこれに対する     

      各目的物引渡しの日から支払済みまで民事法定利率である年5分の割合による

      遅延損害金の支払を求める事案である。

     2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容

      易に認定出来る事実)

      ⑴ 当事者

       ア 原告は,建築工事請負等を業とする株式会社である。

       イ 被告(同人の妻A(以下「A」という。)を含む。以下同じ。)は,後

        記新築工事,本件工事及び追加工事を原告に注文した者のである。

      ⑵ 新築工事について(甲7,乙3)

       ア 原告は,平成20年2月11日,被告から被告宅の新築工事(以下「新

        築工事」という。)の発注を受け,同工事代金を1800万3000円と 

        して,同工事を請け負う旨の契約を締結した。

       イ 原告は,同年7月26日,新築工事を完成させ,被告に引き渡し,被告

        は,その工事代金として総額1800万3000円を支払った。 

      ⑶ 本件工事について(甲1,2,4,5」) 

       ア 原告は,平成25年9月12日,被告から本件工事の発注を受け,工事 

        代金を159万円として,同工事を請け負う旨の契約をした(以下「本件 

        工事請負契約という。)。

       イ 同年10月16日,原告と被告は,本件工事代金を155万円に減額し

        た。

       ウ 原告は,同年11月2日までに本件工事を完成させて被告に引き渡し,

        同日,被告は原告に対し,同工事代金として155万円を支払った。

       エ 同月11日,原告は被告に上記155万円を返金した。

       オ 平成26年6月18日,被告は原告からの請求を受けて,同工事代金の

        一部として100万円を支払い,その残代金は55万円となった。

      ⑷ 追加工事について(甲3,5)

       ア 原告は,同年5月12日,被告から追加工事を代金1万8360円で請

        け負う旨の契約を締結した。

       イ 原告は,同月14日に追加工事を完成させ,被告に引き渡した。

     3 争点及び当事者の主張

      ⑴ 本件工事の瑕疵の有無(争点1)

       ア 原告が本件工事で施工したバルコニー(以下「本件バルコニー」とい

        う。)の1階部分には雨漏りが発生しているところ,1階部分に雨漏りを

        生じさせないことは本件工事の契約内容となっていたから,雨漏りの発生

        は,原告の仕事の瑕疵となる。

       イ 原告の主張

         本件工事では,1階部分が雨に濡れないことが契約内容になっていると

        はいえないから,雨漏りの発生をもって瑕疵があるということはできず,

        本件工事は何らの瑕疵なく完成している。

      ⑵ 瑕疵修補に代わる損害賠償請求権による相殺の可否(争点2)

       ア 被告の主張

         本件工事に雨漏りの瑕疵があることにより,被告は,少なくとも53万

        円1360円の損害を被ったところから,被告が原告に対し有する瑕疵修

        補に代わる53万1360円の損害賠償請求権と,原告の被告に対する工

        事代金債権とを対当額で相殺する。

       イ 原告の主張

         新築工事において実際に施工した工事代金は,見積金額を上回っている

        から,原告に不当利得は発生しておらず,被告の主張は理由がない。

     第3 当裁判所の判断

      1 争点1(本件工事の瑕疵の有無)について

       ⑴ 前記前提事実に,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事

        実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。

        ア 本件工事契約の締結(甲1,2,9,乙21)

        (ア)原告は,被告から,岡山県津山市○○○○○○○○所在の被告宅の   

          バルコニー建築工事の発注を受け,平成25年9月12日,同工事代

          金を159万円とし,特にその引渡時期を定めず,本件工事を請け負

          う旨の契約を締結した。

        (イ)その後,原告は本件工事を開始したが,再度見積書を提出し,本件

          工事代金を155万円に減額した。

        イ 本件工事の完成と代金支払(甲5,9,乙21)

        (ア)原告は,同年11月2日までに本件工事を完成させ,バルコニーを

          被告に引き渡し,同日,被告は原告に対し,本件工事を請け負う旨の

          契約を締結した。

        (イ)その後,原告は本件工事を開始したが,再度見積書を提出し,本件

          工事代金を155万円に減額した。

        イ 本件工事の完成と代金支払(甲5,9,乙21)

        (ア)原告は,同年11月2日までに本件工事を完成させ,バルコニーを

          被告に引き渡し,同日,被告は原告に対し,本件工事代金として15

          5万円を支払った。

        (イ)本件バルコニーは,YKKAP株式会社の商品である「エアキュー 

          ブ」を使用したものであった。

        ウ 本件バルコニー完成引渡後の経過(甲4,5,9,乙1,2,21)   

        (ア)同月3日午前11時,Aは,被告担当者であるB(以下「B」とい

          う。)に対し,バルコニーに雨漏りがあった旨連絡したところ,同日

          午後3時過ぎに,Bは仮養生を行った。

        (イ)同月4日,Bは雨漏りの補修工事を行った。

        (ウ)同月7日,Bはアルミ庇の取付け,内部カーテン紐等の補修工事を

          行った。

        (エ)同月10日,Aは,東京にいるBに対し,バルコニーに雨漏りがあ

          ったと苦情を述べ,すぐに来るように連絡をした。

        (オ)同月11日,Bは,本件工事代金の全額である155万円を被告に

          返金し,同日午後のほか,同月12日及び同月14日に補修工事を」 

          行った。

        (カ)同月16日,AがBに対し,コーキングが汚い,色が気にいらない

          等と苦情を述べたため,同日夕方,Bは補修工事を行った。

        (キ)同月18日,Bは,屋根部分のコーキングのかぶせに水切りを取り

          付ける工事を行った。

        (ク)同月19日,Bは,アルミバルコニーの床材を修理し,アルミバル

          コニーの床際のコーキングかぶせにアルミを取り付けた。その後,A

          はBに対し,取りで付け方が汚い,気に入らない等と苦情を述べ,翌

          朝来るように求めた。

        (ケ)同日,原告の従業員が詐欺の疑いで津山警察署に逮捕された事実が

          新聞報道された。これによると,前記従業員は,平成19年9月,岡

          山県産業振興財団の貸付制度を悪用して,店舗に冷蔵庫等を納入する

          ように装った見積書を作成,提出し,前記財団から現金約700万円

          を騙し取った疑いがあり,前記従業員は容疑を認めていると報じられ

          ていた。

        (コ)平成25年11月20日,Bが被告宅を訪ねるると,Aは「おまえ

          とこの会社の息子が詐欺でつかまったらしいな。恐ろしい会社じゃな  

          ぁ」と述べた。

        (サ)同月21日,BはAに対し,本件工事代金を値引きするとしても,   

          140万円以下にはなることはないと説明した。

        (シ)同月22日,AはBに対し,新築工事の見積書を見せて「これが詐

          欺じゃ,詐欺工務店が…。これ持ってこれから警察署行っちゃる。」

          と言った。」これに対し,Bは「Aさんが警察行かれると言われるも

          のを,当社は止めることはできません。」と言うと,その後,音信不

          通となった。

        (ス)平成26年5月9日,AはBに対し,雨漏りの補修工事が履行され

          ていない以上,本件工事代金は支払わないと述べ,その支払を拒否し

          た。

        (セ)原告代理人である西村啓聡弁護士は,被告に対し,同年6月5日付

          内容証明郵便により,本件工事代金を支払わなければ本件工事代金,

          遅延損害金及び弁護士費用の支払を求める訴訟を提起する旨告知し 

          た。

       エ 本件バルコニーの状況(乙5の3)

         本件バルコニーは,その後も雨漏りが継続し,降雨時にはしずくがポタ

        ポタとその1階部分(以下「本件1階部分」という。)に垂れる状況とな

        っていた。

      ⑵ 本件1階部分に雨漏りを生じさせないことは,本件工事の契約内容となっ

       ていたか。

       ア 被告は,本件1階部分に雨漏りを生じさせないことが本件工事の契約内

        容となっていたと主張するのに対し,原告は,同部分に雨漏りを生じさせ

        ないことに関する明示の合意も黙示の合意もないと主張し,証人Bの尋問

        の結果(陳述書(甲9)を含む。以下同じ。)中にはこれに沿う証言部分

        があるので,以下検討する。

       イ まず,原告は,本件1階部分をバイク置場・物置として利用することは

        「エアキューブ」の通常の利用方法であると主張するが,証拠(甲8,乙

        5の1,乙8,13~19)によれば,「エアキューブ」は,その1階部

        分を乗用車の駐車場とする施行例が多いことは認められるものの,本件の

        ようにバイク置場・物置といった目的に利用する施行例を認めることはで

        きないから,本件1階部分をバイク置場・物置として利用することは,

        「エアキューブ」の通常の利用用法とはいえず,原告の前記主張は採用す

        ることはできない。

         次に,前記証拠によれば,「エアキューブ」は,剥き出しの柱でバルコ

        ニーを支える施行例が多いことが認められるものの,本件のように1階部

        分の三方を壁でコの字形二囲む施行例は,既設のブロック塀の上に設置す

        る場合(乙18の3頁)を除いて認めることができない。

         さらに,証拠(乙22)及び証人Aの尋問の結果(陳述書(乙21)を

        含む。以下同じ。)によれば,被告は,本件バルコニーの1階部分に,本

        件工事契約締結の1か月余り前となる平成25年7月29日に購入した4

        00ccのバイク1台,被告の弟から預かったバイク1台,自転車1台及

        びバイク用の工具等を収納する飾り棚を置きたいとの希望を持っていたこ

        とが認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。

         以上の事実に加え,被告がBに対し,本件1階部分をバイク置き場とし

        て使用することを伝えていたことは当事者間に争いがないことを併せ考慮

        すれば,「エアキューブ」は,その1階部分を乗用車の駐車場スペースと

        して利用することを想定した商品であるにもかかわらず,被告は,本件バ

        ルコニーの1階部分を,「エアキューブ」による通常の利用方法とは異な   

        り,雨に濡れないものとしたいとの希望をもっていたと推認することがで 

        きる。   

       ウ そして,前記認定のとおり,原告は,同年11月3日にAから雨漏りの

        連絡を受けるや,その日のうちに補修工事を行うのみならず,その後も同

        月4日から同月19日までの間に8回に亘って繰り返し補修工事を行って

        いるが,仮に原告主張のとおり,本件1階部分に雨漏りを生じさせないこ

        とが本件工事の契約内容になっていないというのであれば,Aから雨漏り

        の連絡を受けたからといって,原告が補修工事を行う必要はないというべ

        きである。

         この点について原告は,被告の度重なるクレームによって,雨漏りの対

        応をしない限り工事代金を受け取れないと考えたから補修工事を行った旨

        主張するが,全証拠によるも,本件工事代金が支払われた同月2日以前に

        Aが原告に対しクレームを付けたことを認めるに足りる証拠はないし,前

        記認定のとおり,原告は,本件工事代金を受領後も,Aからの苦情を受け

        て補修工事を行っているのであるから,原告の前記主張には理由がない。

         また,前記認定のとおり,補修工事の回数が9回と多いことからしても

        施主に対する厚意に基づく工事をいうことはできないというべきである。

       エ さらに,前記認定のとおり,原告は,Aからの雨漏りの苦情の連絡を受

        けた翌日に同月11日,受領済みの本件工事代金を全額返還しているとこ

        ろ,この返金の理由について原告は,Aが本件工事に瑕疵があったと騒ぎ

        立てたため,一度返金して対応しない限り,クレームはやむことはないと

        考えたためである旨主張する。

                          しかしながら,前記認定のとおり,原告が本件工事代金を返金した同日

        までにAが原告に連絡をしたのは同月3日とその1週間後である同月10

        日の2回にすぎないのであるから,代金全額を返還して対応しない限りク

        レームがやむことはないと考えるほど,その頻度が多いということはでき

        ず,また,その程度も代金全額を返還しなければならないほど深刻なもの

        であったことを認めるに足る証拠はないから,原告の前記主張には理由が

        ない。

         このほか,原告は,本件工事代金を,契約当初の159万円か羅155

        万円に減額したのは,Aから強引に見積李のやり直しを迫られたためであ

        ると主張するが,仮に原告の主張どおりであれば,こうしたやりとりは甲

        5(報告書)に記載されてしかるべきであるのにこれを認めることができ

        ず,このほかこの事実を認めるに足る証拠はないから,原告の前記主張は   

        採用することができない。

         なお,原告は,本件工事のみならず,新築工事についてもAからの度重

        なるクレームを受けていた旨主張し,証人Bの尋問の結果中にはこれに沿

        う証言部分があるが,仮に原告の主張するとおり,新築工事についてAか

        ら繰り返しクレームを受けていたとしても,そうした事実を承知のうえで

        本件工事契約を締結するに至ったというべきであり,原告としては,本件

        工事でもクレームが出ることはある程度予想できたものと言うべきである

        から,原告の前記主張には理由がない。

       オ そうすると,Aから雨漏りの連絡ないしクレームを受けて,繰り返し補

        修工事を行ったり,受領済みの本件工事代金を全額返金したりといった原

        告の前記行動は,本件1階部分に雨漏りを生じさせないことがその契約内

        容となっているとの認識を原告が有していない限り,説明することが甚だ

        困難なものというべきである。

         また,証拠(証人A,証人B)及び弁論の全趣旨によれば,原告と被告

        との間で,補修工事にかかった費用について,その金額や負担割合等に関

        する話を一切していないことが認められ,こうしたことからすれば,補修

        工事が本件工事とは別個の新たな工事契約に基づくもの認めることもでき

        ない。

       カ 以上によれば,本件工事契約においては,本件1階部分に雨漏りを生じ

        させないことがその契約内容となっていたものと認めるのが相当であり,

        この認定に反する証人Bの証言は採用できず,他にこの認定を覆すに足り

        る証拠はない。

      ⑶ 原告は被告に「エアキューブ」の特質を説明したといえるか。

       ア 原告は被告に対し,雨水やしずくがたれるという「エアキューブ」の特

        質を直接口頭で説明していないことは当事者間に争いがないところ,原告

        は「エアキューブ」のカタログ(甲8)を被告に交付し,その内容を確認

        してもらったうえで被告が同商品を選択した以上,その特質上避けられな

        い雨漏りについて原告が責任を負う理由はない旨主張し,証人Bの尋問の

        結果中にはこれに沿う証言部分がある。

       イ この点につき,証拠(甲8,乙8)及び弁論の全趣旨によれば,YKK 

        AP株式会社の商品カタログには,「エアキューブる」の使用上の注意と

        して,「バルコニーの床下は屋根・ひさしではありません。雨水・しずく 

        がたれることがあります。」との記載があることが認められ,これによる

        と,雨水やしずくがたれることは同商品の特質上避けられないということ

        ができる。

         そして,弁論の全趣旨によれば,当初,原告は,カタログ(乙6)を被

        告に交付し,その内容を確認してもらった旨主張していた(なお,平成2 

        7年2月23日付け原告準備書面⑴4~5頁において「乙6」を渡したと

        主張するが,これは「乙8」の誤記と思われる。)にもかかわらず,被告

        から,本件工事契約の申込み当時,乙8は未だ発行されていなかったこと

        を主張されるや,急遽,被告に対し交付したのは甲8であると主張を変更

        していることからすると,原告が被告に甲8を交付したとする証人Bの証

        言はにわかに信用することができず,他にこの事実を認めるに足りる証拠

        はない。

         よって,原告が被告に甲8を交付したとの事実を認めることはできず,

        原告の前記主張を採用することはできない。

       ウ もっとも,被告は,Bから「エアキューブ」完成時の写真等を掲載した 

        A4判の資料を3,4枚交付されたこと自体は認めている(ただし,「エ  

        アキューブ」の前記特質が記載されたものかは定かではない。)ところ,

        仮に原告が被告に交付した資料に「エアキューブ」の前記特質が記載され  

        ていたとしても,工事に使用する商品を選択するにあたり,一般の消費者

        である被告が,施工業者である原告から交付された商品カタログに記載さ

        れた使用上の注意を閲読し理解することは,特段の事情がない限り期待す  

        ることはできないというべきであって,本件においてはそうした特段の事

        情を認めるに足りる証拠はない。

       エ そして,全証拠によるも,被告が「エアキューブ」の前記特質に関する

        知識を有しているとの事情が窺えないことに照らすと,本件工事契約を締

        結するにあたり,施工業者である原告としては,注文者である被告に対し

        ,「エアキューブ」が前記特質を有することについて説明する義務があっ

        たというべきであり,そうした義務があるにもかかわらず,原告は被告に

        対し,同商品の前記特質を何ら説明していないのみならず,前示のとおり

        ,甲8を交付したとの事実を認めることもできないのであるから,結局,  

        原告は,前記説明義務を履行していないというべきである。

       オ なお,前記認定のとおり,原告は,Aからの雨漏りの苦情を受けて繰り

        返し補修工事を行うのみならず,本件工事代金を返金しているところ,証

        拠(甲5)及び弁論の全趣旨によれば,前記Aによる雨漏りの苦情以降,

        原告代理人を含む原告側から被告に対して,雨水やしずくがたれることは

        「エアキューブ」の商品の特質から避けられないことを主張ないし説明し

        た形跡は認められないのみならず,証人Bは,「エアキューブ」は発売さ

        れて間もない商品であり,本件工事までに「エアキューブ」を使用したバ

        ルコニーの施工経験がないと証明するとともに,同商品の特質を知った時

        期を尋ねられても曖昧な証言をするにとどまっているのであって,こうし

        たことからすれば,本件工事契約締結の際,Bが「エアキューブ」の前記

        特質について正確な知識を有していなかったのではないかとの疑問を払拭

        することができない。

       カ 以上によれば,本件工事契約締結に際し,原告が被告に対し,「エアキ

        ューブ」の前記特質を説明したということはできないから,原告の前記主

        張には理由がない。

      ⑷ 小括

        前記認定のとおり,本件工事契約においては,本件1階部分に雨漏りを生

       じさせないことがその契約内容となっていたところ,原告は被告に対し,雨

       水やしずくがたれることがあるという「エアキューブ」の特質を説明すべき

       義務があったにもかかわらず,これを履行せず,これによって被告は,「エ

       アキューブ」の前記特質を承知しないまま同商品を選択し,これを受けて原

       告が「エアキューブ」を設置した結果,本件1階部分に雨漏りが生じたもの

       と認めるのが相当であるから,結局,本件工事には瑕疵があったというべき

       であり,原告の前記主張を採用することはできない。

     2 争点2(瑕疵修補に代わる損害賠償請求権による相殺の可否)について

      ⑴ 前項において説示したところによれば,原告が施工した本件バルコニーに

       は,雨漏りの瑕疵(以下「本件瑕疵」という。)が存したことが認められる

        そして,前記認定事実のほか,証拠(甲8,乙5,8)及び弁論の全趣旨

       によれば,本件1階部分に発生した雨漏りを防止するためには,バルコニー

       に屋根を設置する補修工事を行うほかないものと認められるところ,証拠(

       乙6,7,10,11)によれば,その工事費用の見積額は,「パワーアル

       ファF型」が53万1360円であり,「ヴェクタ―F型」が54万円であ

       ることが認められる。

        以上によれば,本件瑕疵によって,被告は少なくとも53万1360円を

       下らない損害を被ったものと認められ,原告は被告に対し,瑕疵修補に代わ

       る損害賠償として同額の金員を支払う義務を負う。

      ⑵ そして,被告が,平成27年1月13日の第1回口頭弁論期日において, 

       上記損害賠償請求権を自働債権とし,原告の本件請求債権を受働債権を賭し

       て,対当額で相殺する旨の意思表示をした事実は当裁判所に顕著であるから

       ,この点についての被告の主張は理由がある。

     3 争点3(不当利得返還請求権による相殺の可否)について

      ⑴ 被告は,新築工事に工事費用の水増しがあったと主張するところ,前記前

       提事実に,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認めら

       れ,この認定を覆すに足りる証拠はない。

       ア 原告は,平成20年1月31日,新築工事の設計図(以下「新築設計図 

        」という。)を作成し,被告に引き渡した。

       イ その後,原告は,同年2月11日までに,新築工事の見積書(以下「新

        築見積書」という。)を作成し,被告に交付した(甲9,乙3)。

       ウ 同日,原告と被告は,工事代金を1800万3000円として,新築工

        事契約を締結した。(甲9)

       エ 新築見積書によると,「AW-8半外付引違サッシ(網戸付)畳ルーム

        」(単価2万9570円)(以下「本件サッシ」という。)は3個,「A

        W-12堅すべり出し(網戸付)子供室(南)」(単価2万4540円)

        (以下「本件すべり出し」という。)は1個計上されていたところ,新築 

        設計図によると,本件サッシは1個しか設置されておらず,また,本件す 

        ベり出し」は設置されていなかった(乙3,4)

       オ 新築工事は,新築設計図のとおりに施工され,同年7月26日に完成し

        ,被告に引き渡された。そして,被告は原告に対し,新築工事の工事代金

        として総額1800万3000円を支払った。(甲7,9,証人B)

       カ この新築工事を施工するにあたり,その工事内容に変更があったため,  

        工事代金は当初に見積りよりも26万1144円増えたが,原告は被告に

        対し,この増加金を請求しないこととし,その対価として,下記キのイベ

        ントを被告宅(以下「本件建物」という。)において開催すること,及び原

        告の工事実績として本件建物を紹介する広告記事(以下「本件広告記事」と

        いう。)を雑誌に掲載することを被告は承諾した。(甲6,乙20,21)

       キ 本件建物の完成後,原告は,本件建物を一般市民に公開する「モニター

        ハウス」と称するイベント(以下「本件イベント」という。)を開催すると

        ともに,本件広告記事を雑誌に掲載した(乙20,21)

      ⑵ 上記認定に対し,原告は,新築工事の着工前,Aに対し,新築意見書と新築

       設計図に異なる点はあるが,別の工事をすることで金額調整する旨説明して

       いるし,また,完成引渡時において,被告及びAに対し,新築見積書に記載さ

       れていない工事を行ったことの同意げを得て引受書を受領しているほか,実

       際に新築見積書の見積書金額を26万1144円分上回る工事を行っている以上,  

       原告に不当利得は発生していない旨主張し,証人Bはこれに沿う証言をする。

        しかしながら,原告と被告との間で,新築設計図に基づく工事を行うこで 

       合意したのであれば,同設計図に基づく見積書を作成して交付すれば足りる

       ものというべきところ,仮に原告の主張するとおり,被告の要求により7回も

       設計図や見積書を作成したという事情があったとしても,見積書を作成し直

       すことなく,今後行う新築工事によって金額調整するという煩瑣は手続をし

       なければならない理由とはならないし,また,以前に作成した見積書の日付

       を変更して交付する理由ともならないというべきである。

        確かに,引受書(甲7)には,請負契約書・売買契約書に基づき本件契約を引

       き受けた旨の記載とともに被告の記名押印が認められるものの,同引受書は

       ,単に本件建物の引渡しを受けたことを明らかに過ぎないものと認められ,

       同引受書をもって,新築見積書に記載のない工事を他の工事で対応したこと

       についてまで,被告が了承したものと認めることは困難であるというべきで

       ある。

      ⑶  さらに,証人Bは,本件イベントや本件広告掲載をすることで新築工事代金

       から値引きするとの話をしたが,26万1144円全てを値引きするとの話

       はしていない旨証言するが,仮に証人Bの証言どおりとするならば,値引き

       をいくらとするのかについても当然被告側に伝えられてしかるべきところ,

       全証拠によるも,その値引き額をいくらとするの伝えたことを認めるに足る

       証拠はない。

        よって,証人Bの上記証言は信用できず,原告の上記主張には理由がない

       。

      ⑷ 以上によれば,被告は,新築工事で設置されていない本件サッシ及び本件

       すべり出しについても工事代金を支払っ手いると言えるから,原告が新築工

       事の工事代金としても受領した金員のうち,8万3680円(=2万9570

       円×2+2万4540円)は法律上の原因のない不当利得ということになり,

       これは消費税込みで8万7864円である。

        よって,原告は被告に対し,不当利得返還債務として同額の金員を支払う 

       義務を負う。

      ⑸ そして,被告が,平成27年1月13日の第1回口頭弁論期日において,

       上記不当利徳返還請求権を自働債権とし,原告の本件請求権を受働債権とし

       て,対当額で相殺する旨の意思表示をした事実は当裁判所に顕著であるから

       ,この点についての被告の主張は理由がある。

     4 まとめ

      ⑴ 以上のとおり,被告は原告に対し,本件工事の瑕疵による損害賠償請求権

       53万1360円,及び新築工事における不当利得返還請求権8万7864

       円の計61万9224円の請求債権を有し,一方,原告は被告に対し,本件

       工事の残代金55万円及びこれに対する平成25年11月3日から支払済み

       まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,並びに追加工事代金1万8

       360円及びこれに対する平成26年5月15日から支払済みまで同法所定

       の年5分の割合による遅延損害金の支払い請求権(元金56万8360円)を

       有していた。

      ⑵ 被告は原告に対し,平成27年1月13日の第1回口頭弁論期日において

       ,上記請求債権をもって,上記支払請求権とその対当額においてて相殺する

       との意思表示をしたこと前記のとおりであるから,双方の債権は,相殺適状

       を生じたと気に遡ってその対当額において消滅し,その結果,原告の上記支

       払請求権はすべて消滅した。

     5 結論

       以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することと

      し,主文のとおり判決する。  

          津山簡易裁判所

              裁判官   大   野   裕   之