岡山県北の弁護士 津山総合法律事務所  

岡山県北の弁護士 津山総合法律事務所(所長 弁護士黒田 彬)

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不動産訴訟についての最近の判決

不動産訴訟についての最近の判決

 

     

   岡山地裁津山支部平成28年(ワ)第64号土地所有権確認請求事件

  (一部勝訴)

 

     

     令和元年9月6日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

     平成28年(ワ)第64号 土地所有権確認請求事件 

     口頭弁論終結日 令和元年7月5日  

     

                 判        決

        

        岡山県久米郡美咲町×××××××

           原                  告     ×   ×   ×   ×

           同訴訟代理人弁護士  木   島   沙  千 恵

           同          河   内   紀   篤

                        岡山県津山市××××××××

           被       告        X1

        岡山県久米郡美咲町×××××××××

           被       告        X2

        岡山県勝田郡勝央町××××××××

           被       告        X3

        岡山市××××××××××

           被       告        X4

        岡山県久米郡美咲町××××××××

           被       告        X5

         上記5名訴訟代理人弁護士 黒   田       彬

                 

                 主        文

     1 原告が,別紙物件目録記載1,2及び4のうち別紙図面1記載K24,K4

      2,K25,K45,K14,K9,K5,K3,K2,K43,K24の各

      点を順次直線で結んで囲まれた部分につき,所有権を有することを確認する。

     2 被告X1は,原告に対し,別紙物件目録記載1及び2につき,昭和53年4

      月3日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

     3 被告X1は,原告に対し,別紙物件目録記載4のうちの別紙図面1記載K2

      4,K42,K25,K45,K14,K9,K5,K3,K2,K43,K 

      24の各点を順次直線で結んで囲まれた部分につき,昭和53年4月3日時効

      取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

     4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

     5 訴訟費用は,原告と被告X1との間に生じた費用は,これを4分し,その3

      を被告X1の負担とし,その余を原告の負担とし,原告と被告X2,被告X3, 

      被告X4及び被告X5との間に生じた費用は,原告の負担とする。

    第1 請求

     1 原告が,別紙物件目録記載1,2,3及び4のうち別紙図面1記載K45, 

      K25,K42,K24,K43,K44,K14,K45を順次直線で結ん

      で囲まれた部分(地積90.74平方メートル)につき,所有権を有すること

      を確認する。

     2⑴ 主位的請求

        被告X1は,原告に対し,別紙物件目録記載1及び2につき,昭和53年

       4月3日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

      ⑵ 予備的請求

        被告X1は,原告に対し,別紙物件目録記載1及び2につき,昭和53年

       4月3日時効取得を理由とする所有権移転登記手続をせよ。

     3 被告X1は,原告に対し,別紙物件目録記載4のうち別紙図面1記載K45,

      K25,K42,K24,K43,K44,K14,K45を順次直線で結ん

      で囲まれた部分(地積90.74平方メートル)につき,昭和53年4月3日

      時効取得を理由とする所有権移転登記手続をせよ。

     4 被告X2,被告X3,被告X4×及び被告X5は,原告に対し,別紙物件目

      記載3につき,Y2から原告への昭和53年4月3日売買を原因とする所有権

      移転登記手続をせよ。

    第2 事案の概要

     1 本件は,原告が,別紙物件目録(以下「目録」という。)記載1,2,3の土

      地及び同4の土地のうち別紙図面1記載K45,K25,K42,K24,

      K43,K44,K14,K45の各点を順次直線で結んだ範囲内の土地(地

      積90.74平方メートル,別紙図面1記載「⑴A1」部分。以下「本件A

        1土地という。)(以下,前記各土地のうち目録記載3の土地を除く各土地

      を併せて「本件被告X1名義の土地」という。)について,原告は,昭和53

      年4月3日,当時本件被告X1名義の土地の所有者であった亡Y1(平成20

      20年4月6日死亡。以下「亡Y1」という。)及び目録記載3の土地の所有

      者であった亡Y2(平成23年3月6日死亡。以下「亡Y2」という。)との

      間で,本件被告X1名義の土地及び当時同土地上に存在した建物(以下「本件

      旧建物」という。),目録記載3の土地,久米郡美咲町×××××××××××所

      在の地番1491番2の土地(以下「1491番2土地」という。)を含む不

      動産を合計8万円で売買する旨の契約を締結し,本件被告X1名義の土地及び

      目録記載3の土地の所有権を取得したと主張して,亡Y1から本件被告X1名

      義の土地を相続した被告X1(以下「被告X1」という。)並びに亡Y2の相

      続人である被告X2(以下「被告X2」という。),被告X3(以下「被告X

      3」という。),被告X4(以下「被告X4」という。)及び被告X5(以下

      「被告X5」という。)に対し,前記各土地について原告が所有権を有するこ

      との確認及び本件A1土地を除いた前記各土地について売買を原因とし,本件

      本件A1土地については時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求め,

      X1との関係で,予備的に,前記売買契約の締結が認められないとしても,原

      告は,本件被告x1名義の土地について,昭和53年4月3日以降10年間に

      わたって,所有の意志をもって平穏かつ公然に占有し,その占有開始時におい

      て善意かつ無過失であった,仮に,占有の当初善意無過失でなかったとしても,

      占有開始から20年間所有の意思をもって占有を継続したとして,本件被告Ⅹ1

      名義の土地の時効取得を主張し,被告X1に対し,同土地について原告が所有

      権を有することの確認と目録記載1及美2の各土地について時効取得を原因と

      する所有権移転登記手続を求めた事案である。

     2 前提事実(争いのない事実及び後掲各証拠から容易に認定できる事実)

      ⑴ 当事者

       ア 亡Y1は,昭和53年4月3日当時の目録記載1,2及び4の所有者であ

        った。同人は平成20年4月6日に死亡し,相続が開始した。亡Y1の相続

        人はX1, ××××, ××××, ××××,××××のみであったところ,

        同人らの間で遺産分割協議がされた結果,被告X1が前記各土地を単独で

        取得し,平成28年2月5日,同土地について,被告X1に対して相続を

        原因とする所有権移転登記がされた(甲15,乙1,2)。

       イ 亡Y2,昭和53年4月3日当時の目録記載3の所有者であった。同

        人は平成23年3月6日に死亡して相続が開始した。同人の相続人は,被

        告X2,被告X3,被告X4,被告X5のみである(甲3)。

       ウ 原告は,亡Y1と親族関係にある。]

                  ⑵ 本件被告X1名義の土地,目録記載3の土地の状況等

       ア 目録記載1及び2の各土地は,昭和62年の国土調査によって,1筆の

        土地(地番1490番)を分筆したものである(甲1,2,乙1,2。以

        下分筆前の土地を「分筆前の1490番土地」という。)

       イ 目録記載3の土地は,昭和62年の国土調査によって,1筆の土地(地

        番1491番)を目録記載3と1491番2土地に分筆したものである(

        以下,分筆前の土地を「分筆前の1491番土地」という。)。なお,1

        491番2土地については,昭和63年2月22日に久米郡旭町に寄付さ

        れ公衆用道路となっている(甲3,4)。

                    ウ 原告は,昭和53年頃,本件旧建物を取り壊し,同建物が立っていた土

        地に原告所有の自その宅建物を建築した。

       エ 目録記載3の土地については,昭和53年4月3日以降も,亡Y1及び

        同人から同土地を賃借した亡Y2が占有し,利用していた。原告は,昭和

        54年頃に自宅建物を建築した後も目録記載3の土地を利用することはな

        かった。

      ⑶ 時効の援用

        原告は,本件被告X1名義の土地の地番が1490番及び1490番1の

       みであると誤信して,被告X1に対し,本訴状をもって,目録記載1及び2

       について取得時効が完成したとして,その時効を援用する旨の意思表示をし

       た。その後,前記地番の誤りを訂正したうえで,本件被告X1名義の土地に

       ついて,本件第7回弁論準備手続期日及び本件第13回弁論準備手続期日に

       おいて,民法162条1項及び2項に基づく取得時効を援用する旨の意思表

       示をした(顕著な事実)。

     3 争点及び争点に関する当事者の主張

      ⑴ 売買契約締結の有無(争点1)

      (原告の主張)

       ア 原告は,有限会社A建設(以下「A建設」という。)の助言により,

        本件被告X1名義の土地,目録記載3の土地,本件旧建物及び1491番

        2土地を含む土地を購入し,本件旧建物を取り壊した上で,本件被告X1

        名義の土地上に自宅建物を建築することを計画し,昭和53年4月3日,

        亡Y1及び亡Y2との間で,前記不動産について代金8万円として売買契

        約を締結し(以下「本件売買契約」という。),亡Y2が代金は亡Y1に

        支払って欲しいと述べたため,前記代金8万円を亡Y1に交付して支払い,

        同人から領収書(甲6)を受領した。なお,本件旧建物は,亡Y1の所有

        ではなく,亡Y2の所有であった。

         原告は,A建設から,本件売買契約を締結する際,別紙図面2記載の

        斜線部分を地番1491番の土地(以下「原告主張の1491番土地」と

        いう。),イ,ロ,ハ,二,ホ,へ,イの各点を順次直線で結んだ範囲内

        の土地を地番1490番の土地(以下「原告主張の1490番土地」とい

        う。)だと説明され,そのように認識し,これらの土地を全て購入するも

        のと認識して本件売買契約を締結した。目録記載1及び2にはヒューム管

        が埋め込まれているが,これは亡Y2がA建設との間で話をして,原告主

        張の1491番土地と1490番土地との境界を明らかにする目的で設置

        したものである。前記ヒューム管の設置に原告が関与していれば,水の排

        水という目的ではより適した場所があるから,現在設置されている箇所に

        設置することはあり得ない。

         原告は,前記各不動産の所有権移転登記手続を請け負う旨述べていたA

        建設や,亡Y1や亡Y2に対し,所有権移転登記手続を求めていたが,い

        ずれもこれに応じなかったため,現在に至るまで原告への所有権移転登記

        がされていない。

       イ 本件売買契約締結後,原告は,亡Y2に対し,目録記載3の土地の利用

        が妨げられていることについて異議を述べたことはあるが,利用が必要な

        土地ではなかったことから,亡Y2及び亡Y1の利用を黙認していたもの

        である。

       ウ 原告は,昭和62年の国土調査に立ち会っておらず,立ち合いを行った

        であろう亡Y2及び亡Y1がどのように話をしたかについては知らない。

       エ 原告の記憶として残っているのは,目録記載1,2及び3を含む1筆の

        土地と1490番の土地(正確には目録記載4の土地の一部)を購入した

        というものであるが,実際には,分筆前の1490番土地と分筆前の14

        91番土地の2筆を購入し,分筆前の1491番土地は必ずしも自宅敷地

        賭することに限定せず購入した可能性があることは積極的に否定しない。

         目録記載2は,公道から自動車で原告の自宅敷地内に進入するために必

        要であった。原告は昭和43年に運転免許を取得しており,目録記載2は

        実際に駐車場として現在も使用している。

         原告は,A建設から,町道からのトラックの進入のために本件A1土地

        も購入するように言われたために本件A1土地を購入した。本件A1土地

        の石垣の法面北側の目録記載2と同じ高さの部分(別紙図面1記載K24,

        K42,K25,K45,K14,K9,K5,K3,K2,K43,K

        24の各点を順次直線で結んだ範囲内の土地。以下「目録記載4の石垣上

        部土地」という。)がトラックの進入に必要であった。

     (被告らの主張)

       ア 昭和50年4月11日撮影の航空写真から明らかなように,本件被告X

        1名義の土地,目録記載3及び1492番土地については,同時期にお

        いて地形上判然と区別されていた。

         亡Y1は,Zから,昭和42年8月11日,分筆前の1490番の土地

        と同土地上の建物を買い受けたのであり,よって,本件旧建物は亡Y1の

        所有であった。

         原告が現在位置に自宅建物を建築することを目的として土地を買い受け

        るのであれば,亡Y1との間で売買契約を締結すれば足り,亡Y2との間

        で土地の売買契約を締結しなければならない必要性は存在しない。

       イ 原告が亡Y1から受領したという8万円の領収書(甲6)については,

        成立の真正は争わないが,本件売買契約の代金の支払についての領収書で    

        あることは否認する。分筆前の1490番土地の来歴からすれば,前記領

        収書書を根拠に売買契約を締結したとするなら,その対象は「石垣の上部

        の土地」,すなわち,目録記載1及び同2の土地以外にありえない。加えて,

        目記載3にある亡Y1が建てたトラックの車庫から出庫したトラックの方

        向転換をする際には,目録記載2の土地の南西部分までバックして,町道

        から同土地に侵入し,同土地内で大きく旋回してトラックの方向転換をする

        ことでトラックの出入庫が円滑に行える構造になっているのであるから,

        亡Y1が××××の営業にとって不可欠なトラックの車庫への出入庫が円滑

        行えなくなるような土地を売却するはずがない。また,亡Y1が目録記載

        2の土地を含む「石垣の上部の土地」を全て原告に売却したのであれば,

        昭和62年の国土調査の際にわざわざ分筆調査を行う必要はない。よって

        亡Y1が「石垣の上部の土地」について原告との間で売買契約を締結して

        いたとしても,その対象は目録記載1に限られる。

       ウ 原告が亡Y2との間で土地売買契約を締結したとすれば,考えられるの

        は目録記載3についても取得する必要性があった場合であるが,目録記載

        3については,原告が自宅建物を建築した後も,亡××が継続して占有し,

        亡Y1が亡Y2から同土地を賃借して同土地上にトラックの車庫を建築し

        利用していた。原告はこれまで目録記載3の土地については全く関心を示

        しておらず,亡Y2が同土地を亡Y1に賃貸し,亡Y1が同土地を占有し

        ていたことについて何ら異議を述べていないところ,本件売買契約におい

        て目録記載3が目的物となっていたのであれば,前記のようなことはあり

        得ないことである。

      ⑵ 取得時効の成否(争点2)

       (原告の主張)

       ア 原告は,昭和53年4月3日,原告主張の1491番土地及び原告主張   

        の1490番の土地を購入する売買契約を有効に締結したと考え,昭和

        53年9月23日以降,本件旧建物を取り壊し,本件被告X1名義の土地

        を嵩上げするなどして整地し,目録記載1の土地上に自宅建物を建築し,

        目録記載2の土地に自家用車を駐車したり洗濯物を干したりして使用し,

        現在まで同所に居住している。

       イ 昭和53年当時,目録記載1及び同2の一部は現在より敷地の高さが若

        干低く,本件旧建物の2階と町道の高さが同程度であり,本件旧建物の東

        側は横を流れる××川の通常時の水路から1メートル弱という高さであっ

        た。原告は,本件売買契約締結後,本件旧建物を壊して原告自宅建物を建

        築する際,目録記載1の原告自宅建物南西側土地の町道側についてのみ

        整地し,同土地の××川側部分については,約2メートル前後のくぼみが

        ある状態のまま残していたところ,原告の孫が2度前記くぼみ部分に落下

        するなどしたため,平成5年頃,××鉄工所に依頼して,同所に鉄骨4本

        を入れ,その上に鉄板を設置し,くぼみ部分にブロック塀や土砂を入れて,

        現在の状態に整地した。また,本件A1土地について,自宅建設時に整地

        を行い,自宅完成後は雑草を刈るなどして管理し,現在まで占有している。

        同土地にÙ字溝を設置したのも原告である。

       ウ 以上のとおり,原告は,本件被告X1名義の土地について,過失なく自

        己の所有地と信じて使用収益してきたものであり,昭和63年4月3日に

        おいても同様に本件被告X1名義の土地を占有していた。

         また,仮に,占有開始時に善意無過失出なかったとしても,原告は,昭 

        和53年4月3日以降20年以上もの間,所有の意思をもって,本件被告

        X1名義の土地を占有している。

         よって,原告は,本件被告××名義の土地について,取得時効を援用す

        る。

      (被告X1の主張)

       ア 昭和62年の国土調査の際に,分筆前の1490番土地から,原告の自

        宅敷地部分である目録記載1の土地と敷地ではない目録記載2の土地に分

        筆された。原告は昭和62年の国土調査や分筆を把握していないと主張す

        るが,原告自宅建物の眼前で亡Y1の立合いのもとに測量業者により測量

        が実施されて境界標が設置されているのであり,これを原告が知らなかっ

        たということあり得ない。原告が分筆前の1490番の土地を分筆するこ

        とについて異議を述べていないことは,国土調査が実施された昭和62年

        当時,原告は亡Y1が分筆前の1490番土地の所有者であると考えてい

        たことを示す。

       イ 原告が占有しているのは目録記載1の土地のみであり,同土地について

        も,亡Y1が原告に対し自らの所有地である同土地を建物の敷地として無

        無償で使用することを許諾したものであって,原告の占有は他主占有であ

        るから取得時効は成立しない。

       ウ 原告は,目録記載1及び同2の土地の高さが現在と異なっており,町道

        から数メートル東へ進入した部分に約2メートルの高さの石垣があったな

        どと主張するが,昭和50年4月11日時点の本件被告××名義の土地付

        近の航空写真(乙3の1)からすれば,本件旧建物が現在の原告自宅建物

        とほぼ同位置に町道に沿って建てられており,原告が主張するような状態

        が存在していないことは明らかである。

         分筆前の1490番土地は,昭和30年代に亡Y1の前の所有者である

           Zが当時の地番1490番の畑(地積39平方メートル),これに隣接す

        る里道及び前記1490番の畑の北側に隣接する久米郡美咲町××××××

        ×1510番の田(以下「1510番土地」という。)の一部を宅地として

        造成したものであって,同土地の造成はzが所有者であった時期に基本的

        に完了しており,昭和53年の時点で同土地はほぼ現状通りのものであっ

        た。

       エ 昭和53年当時,亡Y1がzから購入した土地のうち目録記載1及び同

        2は建物が使用されないまま放置されていたが,目録記載4の土地は亡Y

        1が耕作していた。したがって,亡Y1は,目録記載1上に建物を建築す

        ことを許諾したが,目録記載4の土地の一部である石垣の下部の土地(別

        紙図面1記載K43,K2,K3,K5,K9,K14,K44,K43

        の各点を順次直線で結んだ範囲内の土地。以下「目録記載4の石垣下部土

        地」という。)を使用する権限を原告に与える又は売却するということは

        あり得ない。また,原告は,亡Y1が目録記載4の土地を耕作し,目録記載

        1及び同2の水路を利用して目録記載4の土地に水を引いていたことにつ

        いて何ら異議を述べたことはなかった。原告が前記水路の使用について異

        議を述べ始めたのは平成20年4月6日に×が死亡して以降のことである。

        なお,亡Y1は,高齢となったことから,平成18年からWに目録記載4

        の土地の耕作をゆだねていた。   

          第3 当裁判所の判断

      1 認定事実

        前記第2,2の前提事実,証拠(原告本人,被告X1本人,甲27及び乙

       20のほか,各項に記載したもの。ただし,以下の認定に反する部分を除く。

       なお,本判決を通じ,証拠を適時する場合には,特に断わらない限り,枝番を含 

       むものとする。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

       ⑴ 亡Y1は,昭和53年4月3日当時の目録記載1,2及び4の所有者で

        あったところ,同人は平成20年4月6日死亡し,相続が開始した。同人

        の相続人間で遺産分割協議がなされた結果,被告X1が前記各土地をいず

        れも単独で取得し,平成28年2月5日,同土地について,被告××に対し

        て相続を理由とする所有権移転登記がされた(甲15,乙1,2)。

         亡Y2は,昭和53年4月3日当時の目録記載3の所有者であった。同

        人は平成23年3月6日に死亡して相続が開始した。相続人は,被告X2,       

2        被告X3,被告X4,被告X5のみである(甲5)。

       ⑵ Zは,大正12年4月4日,久米郡××××××××××××××××××××1

        490番の土地(当時の地積は39平方メートル)及び久米郡××××××

        ×××××××1482番の土地(地目は田,地籍は2271平方メートル。

        以下「分筆前の1482番の土地」という。)を,家督相続により取得し

        た。同人は,前記1490番の土地の地積を超える床面積の本件旧建物を

        建築した(乙7,12の2)。

         Zは,亡Y1に対し,昭和42年8月8日,前記1490番の土地(地

        積39平方メートル),分筆前の1428番土地及び本件旧建物を売却し

        た(甲1,2,乙7,12)

         昭和62年の国土調査により,前記1490番の土地については,地積

        について錯誤を理由に39平方メートルから231.83平方メートルと

        されたうえで,目録記載1(地積171.83平方メートル)及び目録記

        載2(地積60平方メートル)に分筆され,地目について,目録記載1に

        ついては畑から宅地に変更され(地目変更年月日不詳),目録記載2につ

        いては雑種地とされた(甲1,2,乙1,2)。分筆前の1482番土地

        は,昭和62年国土調査によって,目録記載4の土地(地目は田,地積6

        71平方メートル),地番1482番2(地目は雑種地,地積998平方

        メートル),地番1482番3(地目は畑,地積129平方メートル),

        地番1482番3(地目は公衆用道路,地積114平方メートル)の各土

        地に分筆された(甲15,乙12ないし15)。

       ⑶ 亡Y2は,昭和36年9月30日,分筆前の1941番土地(当時の地

        目は山林。地積112平方メートル)を相続により取得した。その後,同

        土地は,昭和62年の国土調査の結果,地目を山林から宅地に変更されたう

        え(地目変更年月日不詳),目録記載3(地積57.41平方メートル)

        と1492番2土地(地積96平方メートル)に分筆され,1491番2土 

        地については地目を公衆用道路として昭和63年2月22日に久米郡××に

        寄付された(甲3,4)。

       ⑷ 原告は,亡Y1に対し,昭和53年4月3日,土地及び家屋代金として8

        万円を支払い,亡Y1は,「Y2 Y1 代表Y1」と記載した原告宛の

        同日付け領収書を原告に交付した。

       ⑸ 原告は,昭和53年,遠藤建設に依頼して,昭和54年7月2日までの

        間に,本件旧建物を取り壊し,ユンボを用いて地ならしをし,丁張を行う

        などして,原告所有の自宅建物を建築した(甲7ないし10,16)。

         原告は,昭和54年頃目録記載1の土地上に原告所有の自宅建物を建築

        した後現在に至るまで同所において生活し,目録記載2を駐車場等として

        利用している(甲11)。

       ⑹ 昭和53年4月3日以降も,目録記載3については亡Y2が利用してお

        り,亡Y2から同土地を借りたY1が同土地上にトラック車庫を建築し,

        自己の仕事に使用するトラックの車庫として,少なくとも平成19年頃ま

        で継続して使用していた。これに対して,原告は特に異議を述べることは

        なかった(乙19,23)。

       ⑺ 亡Y1及び被告X1は,目録記載K4の本件A1土地の南側部分をWに

        耕作等させていた。平成28年6月12日頃,Wが本件A1土地東側の草

        刈りを行うなどしたことがあった。

       ⑻ 原告は,被告X1に対し,本件第7回弁論準備期日及び本件第13回弁

        論準備期日において,本件被告X1名義の土地について,占有を開始した  

        昭和53年4月3日から,10年を経過した昭和63年4月3日時点及び

        20年を経過した平成10年4月3日時点までの間,所有の意思をもって

        同土地の占有を継続下などとして,民法第162条1項及び2項に基づく

        取得時効を援用する旨の意思表示をした。

      2 売買契約締結の有無等(争点1)について

       ⑴ 前記⑷及び⑸からすれば,原告は,昭和53年4月3日に,少なくとも亡

        1から土地及び建物を購入したものと認められるところ,本件において,

        売買の目的となった具体的な土地の範囲及びその形状に関する原告の主張

        を裏付ける証拠としては原告の供述が存在する。しかし,原告の法廷にお

        ける供述は,同じ質問に対して異なった回答をしたり,従前の主張内容とは

        違った回答をしたりするなど,その内容及び態度からして信用し難い。

        そもそも,本件訴訟における売買の目的となった土地の範囲に関する原告

        の主張には,あいまいな部分や矛盾する部分が見られ,一貫性に乏しく,具

        体的な土地の形状に関する主張内容も不自然であると言わざるを得ない。

         よって,前記売買契約における目的不動産に関する原告の主張は採用でき

        ない。

       ⑵ そこで,以下,原告と亡Y1及び亡Y2が昭和53年4月3日時点売買の

        対象の範囲として検討する。

         本件においては,原告は自宅建物を建築し,同所で生活するために土地

        を購入しているところ,原告の自宅建物の所在場所からすれば,日常生活に

        おいて自動車の使用が必要であると解される。原告が建築した自宅建物は

        目録記載1上に存在しているところ,目録記載1及び2の西側の公衆用道路

        は北側が高く南側が低い坂道となっており,その結果,目録記載1の土地と

        前記公衆用道路とには概ね数十センチメートル以上の段差が生じているた

        め,車両はもちろん徒歩であっても,自宅建物に入るためにはより段差が

        ない目録記載2を通過する必要性が高い。そして,昭和62年の国土調査

        に亡Y1が立ち会ったと推認されるところ,その結果等を考えれば,原告

        と亡Y1及び亡Y2との間で売買契約が締結された昭和53年4月3日当

        時,少なくとも亡Yは目録記載及び2を一体の土地(分筆前の1490番

        土地)と考えていたことがうかがわれる。

         分筆前の1491番の土地と分筆前の1490番土地は従前から明らか

        に別の土地として考えられており(甲3ないし5,乙5,7),A建設や

        亡Y2ないしY1がこれらの土地を1筆の土地として説明することは考え

        難く,また,売買契約を締結した昭和53年4月3日以降も亡Y2及びY

        1が目録記載3を利用していたにもかかわらず,原告がこれに異議を述べ

        たことは認められず,原告自身同土地を原告が使用する必要性はなかった

        と述べている。

         以上のことからすれば,昭和53年4月3日の売買契約時において等j

        者間で目的物として合意した不動産は,分筆前の1490番土地及びその

        上に存在した本件旧建物であったと解するのが相当である。

       ⑶ なお,領収書(甲6)については,本件記録上,原告と亡Y1及び亡Y2

        が,同時期に,本件旧建物及び分筆前の1490番土地以外の土地及び家

        屋の売買をしたことはうかがえないことから,目録記載1上の原告の自宅

        建物を建築することを目的とした本件旧建物及び分筆前の1490番土地

        を取得するための売買代金の領収書であると解するのが相当である。

         そして,当該領収書の「Y2 Y1 代表Y1」との記載については,被

        告らは,亡Y2所有であった1510番土地の地積が昭和62年の国土調

        査によって1123平方メートルから1088平方メートルに減少してお

        り,当該減少分が分筆前の1490番土地に含まれている旨主張するが,

        前記1⑵記載のとおり,分筆前の1490番土地に隣接する分筆前の14

        82番土地の地積も減少しており,その減少した地積も大きい。そうする

        と,1510番土地ではなく,分筆前の1482番土地の一部が分筆前の  

        1490番土地とされた可能性も考えられるが,本件旧建物が建っていた

        位置も考慮すれば(乙3,8),1510番土地の一部が本件建物の敷地

        となっていた可能性は否定できない。

         よって,当時,亡Y及び亡Y2が,本件旧建物の敷地として1510番土

        地が含まれていると考えていた可能性は否定できず,前記1⑹及び前記⑵

        記載の目録記載⑶の使用状況等も踏まえれば,前記領収証の「Y2 Y1

        代表Y1」との記載を理由に,分筆前の1491番土地も前記売買の目的物

        であったと認めることはできない。

       ⑷ 以上のことから,原告は,昭和53年4月3日,亡Y1及びY2との間で,

        目録記載1,2及び本件旧建物の売買契約を締結し,その代金として8万円

        を支払ったことが認められる。

      3 時効取得の成否(争点2)について

       ⑴ 前記のとおり,原告と亡Y1及び亡Y2との間の売買契約に基づき原告

        が所有権を取得したのは目録記載1及び2であり,本件A1土地は含まれ

        ない。そこで,本件A1土地について原告に時効取得がみとめられるかに

        ついて,以下検討する。

       ⑵ 本件A1土地のうち,目録記載4の石垣上部の土については,昭和50年

        11月4日撮影の空中写真(乙3),昭和60年4月25日撮影の空中写真

        (乙4)及び平成28年1月1日撮影の航空写真(乙11)によれば,原告

        が目録記載1及び2の土地を購入した昭和53年4月3日以降現在に至る

        まで,本件A1土地上の石垣の位置及び目録記載4の石垣上部土地の形状等

        に特段変化は見られない。昭和53年4月3日時点における目録記載4の

        石垣上部土地の形状が現在と同じであったことを前提とすれば,前記2⑵記

        載のとおり,原告が目録記載1及び2に置いて生活するうえで自動車を所有

        し利用することが前提となっていたと考えられるところ,分筆前の1490

        番土地の西側の道路の幅員及び目録記載1及び2とその西側道路とが接し

        ている部分の長さ及び高低差等からすれば,目録記載4の石垣上部土地は,

        自動車で目録記載2に西側の公衆用道路を南側から上がってきて同土地に

        進入する際及び同土地から前記公衆用道路に出る際に必要性が高い部分で

        あり,昭和53年4月3日当時も同様に考えられていたものと推認される。

         原告は,A建設から,町道から目録記載1及び2にトラックで進入する

        ために本件A1土地も購入するように言われて同土地も購入した旨主張す

        るところ,前記のとおり,目録記載4の上部土地については,自動車や自

        宅建築時に使用するユンボ等の進入に必要であると解され,A建設が同土

        地について購入を勧めることは十分にあり得ると解される。さらに,昭和

        53年4月3日時点では,昭和62年の国土調査実施前であり,各土地の

        範囲や形状を明確に示す資料に乏しかったと考えられるところ,そのよう

        な状況において分筆前の1490番土地の範囲につき原告と亡Y1との間

        で詳細な確認がされたと認めるに足りる証拠はなく,加えて,原告は,昭

        和53年4月3日頃から現在に至るまで40年以上もの間,目録記載4の

        石垣上部土地を自宅前に駐車し保管している自動車の出入等に必要な土地

        として占有してきたものと認められることなどを考慮すれば,原告は,目

        録記載4の石垣上部土地につき,昭和53年4月3日時点において,亡毅

        から売買によって所有権を取得したものと認識し,現在に至るまで同土地

        の占有を継続してきたものと解するの相当である。

         売買契約締結の経緯や昭和53年4月当時の登記内容及び土地の形状な

     」  どからすれば,原告が昭和53年4月3日時点で分筆前の1490番土地

        の範囲を正確に把握することは容易ではなかったとも考えられるが,亡Y

        1との間で詳細な確認をしていれば原告が所有権を取得する土地の範囲を

        正確に認識できた可能性は高い。そうすると,原告が目録記載4の石垣上

        部土地の占有を開始した昭和53年4月3日時点において,同土地につい

        て自己に所有権があると信じるについて過失がなかったとは認めがたく,

        昭和63年4月3日の経過による時効取得を認めることはできない。しか

        し,本件において,原告は,売買契約を締結し代金を支払った昭和53年

        4月3日以降平成10年4月3日まで20年間,所有の意思をもって,平穏

        かつ公然に目録記載4の石垣上部土地を占有していたことは認められる。

         よって,目録記載4の石垣上部土地については,原告がその所有権を時

        効により取得したと認められる。

       ⑶ 次に,目録記載4の石垣下部土地について検討する。

        ア 原告は,前記土地について,平成53年4月3日以降,草を刈ったり   

         して管理し占有していたと主張するが,これを裏付ける客観的な証拠は

         存在しない。

        イ 原告は,目録記載4の石垣下部土地の占有を裏付ける事情として,被

         X1名義の土地に原告が水路(目録記載1及び2に埋設されたヒューム

         管並びに本件A1土地のU字溝)を設置したと主張するところ,前記水

         路を原告が設置したというためには,前提として,原告が主張するよう

         に,昭和53年4月3日時点で目録記載1及び2に現在の高さよりもか

         なり低い部分があり,目録記載4上の石垣の東側部分は存在していなか

         ったことが前提となる。

          しかし,昭和50年11月4日撮影の空中写真(乙3)及び昭和60

         年4月25日撮影の空中写真(乙4)からすれば,この期間,目録記載

         1及び2において,東側に大きな段差があることはうかがえず,前記⑵

         記載のとおり,本件A1土地上の石垣の位置及び目録記載4の石垣上部

         土地の形状についても変化は見られない。また,甲第7号証ないし甲1

         0号証及び甲16号証記載の工事内容は,あくまで原告の自宅を建築す

         るために必要な範囲の工事であり,原告が主張するような段差をなくす

         ための整地が行われたとは認めがたい。さらに,原告は,自宅建築後平

         成5年頃に,小谷川側の土地が約2メートル程度くぼんでいたところを

         埋める工事をしたと主張するが,それを裏付ける証拠は見当たらない。

         その他,本件において,原告が主張する時期に水路を設置する工事を行

         ったと認めるに足りる証拠はない。そもそも,原告の昭和53年4月3

         日当時の目録記載1及び2の土地の形状についての主張は,その内容が

         不自然であって一貫性にも乏しく,採用し難い。

          以上のことから,目録記載1,2及び目録記載4の石垣上部土地につ

         いては,原告自宅建物の建築後に多少嵩上げ等がされた可能性があると

         しても,昭和53年からほぼ同じ形状であったと推認され,原告が主張

         するような前記水路の設置が原告により行われたとは認められない。

        ウ 以上のことに加え,目録記載4の石垣下部土地については,原告が取

         得する必要性に乏しく,原告による具体的な利用の事実もうかがえない

         ことからすれば,同土地について原告が所有の意思を持って占有を継続

         していたとは認められず,原告による時効取得を認めることはできない。

k     第4 結論

         以上によれば,原告の請求は主文の限度で理由があるからその限度で認

        容することとし,その余は理由がないからこれを棄却することとして,主

        文のとおり判決する。

 

 

        岡山地方裁判所津山支部

 

 

            裁 判 官   栗   原   美   穂