岡山県北の弁護士 津山総合法律事務所  

岡山県北の弁護士 津山総合法律事務所

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岡山弁護士会の弁護士黒田彬に対する懲戒書

弁護士黒田彬を3か月の業務停止とする旨の岡山弁護士会の懲戒書

   

                懲  戒  書

           

               岡山県津山市山北560番地4 ムサシノビル6階

                津山総合法律事務所

                       対象弁護士 黒  田     彬

                       (登録番号 第22632号)

 

    本会は,上記対象弁護士について,懲戒委員会の議決に基づき,次のとおりと

   懲戒する

 

                  主    文

 

           対象弁護士黒田彬を3月の業務停止とする。

 

             

                  理    由

 

    本会は,対象弁護士に対する懲戒の請求について懲戒委員会が別紙議決書の

   とおり議決したので,弁護士法第56条に基づき主文のとおり懲戒する。

 

     令和2年7月3日 

 

                   岡山弁護士会

 

                    会長  猪  木  健  二  ㊞

 

  

 

 

  岡弁2019年(懲)第1号事件

 

 

              議    決    書

 

 

                  岡山県津山市椿高下45番地2

                     懲戒請求者   西  村  啓  聡

                  岡山県津山市山北560番地4 ムサシノビル6階

                    津山総合法律事務所

                     対象弁護士   黒  田     彬

                              (登録番号22632号)

 

   

  上記対象弁護士に対する懲戒請求事案につき審査した結果,次のとおり議決する。

 

                  主      文

       対象弁護士黒田彬を3月の業務の停止とすることを相当と認める。

 

                  理      由 

 

  第1 懲戒請求者の主張する懲戒事由

   1 懲戒請求事由1 

    ⑴ 対象弁護士は,平成31年3月15日,「津山総合法律事務所」と題するウェ

     ブサイト上の「津山総合法律事務所 新着情報」の欄に,「2019/3/11 弁護士

     法人西村綜合法律事務所のインターネット上のサギ広告について,西村啓聡・一

     法師拓也の両名を岡山地方検察庁津山支部に刑事告発」と投稿し,この書き込み

     は同日中に削除したが,改めて,「津山総合法律事務所 新着情報」の欄に,「20

     19/03/11  弁護士法人西村綜合法律事務所の悪質なインターネット上のサギ広告  

     について,岡山弁護士会に同弁護士法人及び弁護士西村啓聡・一法師拓也の懲戒

     処分を請求」と投稿し,その上,「西村綜合法律事務所(西村・一法師)のイン

     ターネット上のサギ広告問題1」「西村綜合法律事務所(西村・一法師)のイン   

     ターネット上のサギ広告問題2」「西村綜合法律事務所(西村・一法師)のイン

     ターネット上のサギ広告問題3」という見出しの下の「詳しくはこちらから」と

     いう箇所をクリックすることにより,対象弁護士が岡山弁護士会に提出した平成

     31年3月11日付け懲戒請求書(以下「3月11日付け懲戒請求書」という。) 

     及び各主張書面の全文を閲覧することができる状態にした。

      不特定多数の人物が閲覧することが可能なウェブサイトのトップページに,「サ

     ギ広告問題」「懲戒処分を請求」と投稿することにより、当該投稿を閲覧した者

     が、懲戒請求者及び一法師拓也弁護士(以下「一法師弁護士」という。)が詐欺

     を行った弁護士であると誤信する可能性は高く,当該投稿は懲戒請求者及び一法

     師弁護士の社会的評価を低下させるものである。

    ⑵ また,対象弁護士が上記ウェブサイトに張り付けた3月11日付け懲戒請求書

     には,「対象弁護士法人には,平成27年1月15日設立以来,交通事故の示談

     交渉について,大幅な賠償金の増額を実現したといえる解決事例は僅かしか存在

     せず,対象弁護士法人が,交通事故の示談交渉について,「岡山県北有数のご相

     談・解決実績」を有し,「大幅な賠償金の増額実績多数」を有するということは,

     虚偽の表示である」「対象弁護士法人が,平成27年1月15日の設立以来,交

     通事故の示談交渉について,大幅な賠償金の増額を実現したといえる解決事例は  

     僅かしか存在しない」などと、誤った憶測がまるで真実であるかのように記載さ

     れている。

      その他にも,3月11日付け懲戒請求書には,「対象弁護士西村及び対象弁護

     士一法師のごとく,弁護士でありながら,サギ師同然の行為を行って恥じること

     のない輩を放置することは,津山の弁護士の信用と秩序を著しく害するものであ

     る。」などと,およそ弁護士が使用すべきでない文言の記載がある。

      このような対象弁護士による事実無根の誹謗中傷により,弁護士法人西村綜合

     法律事務所(以下「西村綜合法律事務所」という。)が交通事故案件の実績が乏

     しい弁護士事務所で,しかも,広告詐欺により顧客を不当に集客しているように

     誤信されてしまうものである。

   2 懲戒請求事由2

    ⑴ 対象弁護士は,3月11日付け懲戒請求書の写しを津山市内の複数の弁護士事

     務所に対して送付し,その際の書類送付状には,「西村啓聡弁護士につき,…,

     平成27年頃,当時の民主党の衆議院岡山3区公認候補となろうとしていたため,

     当職は,岡山弁護士会に西村の懲戒請求を申し立てることにより,内定していた

     民主党の公認の話をぶち壊しにしてやりました。」「当職としては,西村について

     は,政治生命を潰してやれば,いずれは津山からは出ていくものと考え,その後

     は西村に対する攻撃は控えておりましたが,西村は,当職に政治生命を潰されな

     がら,今更東京に帰ることもできないようで,この間,当職が西村に対する攻撃

     を控えているのをよいことに,恥知らずにも何とか津山で弁護士として生き残ろ

     うと,色々と画策しているようであります。」「当職は,この度,弁護士法人西村 

     綜合法律事務所のインターネット上のサギ広告について,西村啓聡及び一法師拓

     也の両名を不正競争防止法違反で岡山地方検察庁津山支部に刑事告発するととも

     に,両名及び弁護士法人西村綜合法律事務所の懲戒請求を岡山弁護士会に申立て

     ましたのでご報告します。」と記載されている。

    ⑵ このような内容の文書を,津山市という狭い地域で活動する複数の弁護士に対

     して真実であるかのように伝えることは,懲戒請求者の社会的評価を低下させる

     ものであり,悪質な名誉棄損である。

   3 懲戒請求事由3

      対象弁護士は,西村総合法律事務所の複数の顧問先に対して,「西村啓聡及び

     一法師拓也の両弁護士につき,以前より弁護士の職業倫理に反する振る舞いが目

     に余るものであったところ,この度,同弁護士法人がインターネット上でサギ広

     告を常習的に行っている事実が明らかとなった」「当職は,西村や一法師のごと

     き、弁護士でありながら,サギ師同然の行為を行って恥じることのない輩を放置

     することは,津山の弁護士の信用と秩序を害するものと考え,西村及び一法師を

     刑事告発した事実についてはすでに各方面に通知済みであります。」と記載され

     た送付状と共に3月11日付け懲戒請求書を送付したもので,これは悪質な業務

     妨害である。

   4 懲戒請求事由4

      懲戒請求者が原告A工務店の訴訟代理人,対象弁護士が被告訴訟代理人となっ

     た請負代金請求訴訟において,請求棄却の第1審判決が出た後,「津山総合法律

     事務所」のウェブサイトに「A工務店の工事の瑕疵・工事費用の水増しを認定」

     と,懲戒請求者の依頼者の実名をウエブサイトに掲示し,その名誉を毀損してい

     た。

           5    懲戒請求事由5

      前項の請求において,控訴審で第1審判決が取り消されてA工務店に対する5

     0万円の支払が認められ,上告棄却により対象弁護士の依頼者Bが懲戒請求者の

     依頼者A工務店に対して50万円の請負代金支払義務を負うことが確定すると,

     対象弁護士は,前項のウェブサイトの掲示を削除した上で懲戒請求者の依頼者A

     工務店に対して直接文書を交付し,同文書において,「上告審判決が下されたの   

     を機に、本件はこれで幕引きにしたいと思い,これまで当法律事務所のホームぺ

     ージに掲載しておりました貴社とB社との間の訴訟事件の一審及び控訴審の判決 

     はホームページから削除いたしました。貴社におかれましても,本件はこれで幕

     引きにしていただきたく,B氏に対し,請負代金の請求等の措置に出ることはお

     控え下さるようお願いいたします。」と述べ,さらに,「貴社が,今後,B氏に対

     し,請負代金の支払い請求する措置に出られるのであれば,当職としては,B氏

     の代理人として,これまでと同様に,全力で貴社と争わざるをえまだせんが,貴社

     が西村弁護士を代理人としてB氏に対し訴訟を提起して以来上告審判決までのこ

     れまでの約4年間の貴社の負担を考えても,本件についてこれ以上争いを続ける

     ことは,貴社にとっても採算の合うものではないと考えますので,賢明な判断を

     されるよう期待する次第であります。」と,請負代金の請求は控えさせようとし

     たもので,弁護士としての品位を害する不当な行為である。

   6 懲戒請求事由6

      対象弁護士は,平成26年12月10日,原告訴訟代理人となって懲戒請求者

     を被告として訴訟を提起したが,その内容は,懲戒請求者がA工務店の代理人と

     して注文者に対して未払請負代金を請求する際,「支払いがない場合には請負代

     金と共に弁護士費用の支払いを求める訴訟を提起する」と内容証明郵便に記載し

     て請負代金の一部を支払わせた行為が恐喝罪に該当するとして,慰謝料の支払い

     を求めたもので,懲戒請求者に対する業務妨害である。

   7 懲戒請求事由7

      対象弁護士は,前項の訴訟における準備書面において,「程度の低い内容の主

     張を平然として,その馬鹿さ加減をさらけだしている」「いくら被告西村が馬鹿

     でも」等の懲戒請求者に対する過度の攻撃的文言を並べ,さらに,「落選して以

     来,弁護士としての業務をほとんど行わず,もっぱら民主党からの資金援助によ

     って生活することも不可能となり,津山で弁護士として生計を立てていかなくて

     はならなくなった人間であって,被告A工務店は被告西村の数少ない顧客であり,

     被告西村のような弁護士にとっては,被告A工務店から得る僅かばかりの報酬も

     十分に違法行為を行う動機となりうる。」などと,訴訟と無関係な誹謗中の文言

     を並べている。これは,名誉棄損行為であり,また,そのような攻撃的な誹謗中

     傷の文言は弁護士としての品位を欠くものである。

  第2 当会綱紀委員会の判断

   1 懲戒請求事由1について

    ⑴ 弁護士がインターネット上で「サギ広告」をおこなっていると指弾する行為は,

     当該弁護士にとっては,その存在が否定される評価となるから,当該弁護士の社

     会的信用を毀損し,また当該弁護士の業務を妨害する行為である。

      したがって,弁護士の身分を有する者が,他の弁護士の広告が「サギ広告」で   

     あると指摘するときは,その評価にあたることを示す十分な資料と根拠をもって

     いなければならない。

    ⑵ 西村綜合法律事務所やその所属弁護士が全く関与していない事例を取扱い事例

     として広告した場合には,「サギ広告」の評価を受け得るが,所属弁護士が関与

     した事例である以上,弁護士法人及び所属弁護士の取扱業務の実例を説明したも

     のということができ,「サギ広告」との評価をすべきものとは解されない。

    ⑶ よって,対象弁護士が懲戒請求者の広告を「サギ広告」と批判し,懲戒請求者

     は「サギ広告を常習的に行っている」と公に表示した行為は,「品位を失うべき

     非行」に該当する。

   2 懲戒請求事由2について 

      対象弁護士が津山市内の法律事務所に送付した書面には,懲戒請求が「サギ広

     告」をした旨の不適切な記載があったから,懲戒請求者の名誉を棄損し,業務

     を妨害するもので,「品位を失うべき非行」に該当する。

   3 懲戒請求事由3について

      対象弁護士が西村綜合法律事務所の顧問先に送付した書面には,「以前より弁

     護士の職業倫理に反する振る舞いが目に余るものであったところ,この度,同弁

     護士法人がインターネット上でサギ広告を常習的に行っている事実が明らかとな

     ったため,当職は,西村及び一法師の両名を岡山地方検察庁津山支部に不正競争

     防止法違反で刑事告発するとともに,岡山弁護士会に両名及び弁護士法人西村綜

     合法律事務所の懲戒処分の請求をいたしました。」「弁護士でありながら,サギ

     師同然の行為を行って恥じることのない輩を放置することは」などの表現があり,

     また,顧問先にも少なからぬ悪影響を生じるであろうということを告知する内容

     も含まれ,懲戒請求者の名誉を毀損し,業務を妨害するものであるから,「品位

     を失うべき非行」に該当する。

   4 懲戒請求事由4について

      民事訴訟事件の結果を当事者名を含めて公表することの当否に確たる基準があ   

     るということはできない状況であり,対象弁護士の弁明において示された,A工

     務店は津山市内では著名な建設会社で公益性があるから公表したとの考え方が不

     適切であるということはできず,A工務店の主張が概ね認められた控訴審判決も

     全文を掲載していることを併せ考えれば,「品位を失うべき非行」にあたるとは

     評価できない。

   5 懲戒請求事由5について

      弁護士は,相手方に法令上の資格を有する代理人が選任されたときは,正当な

     理由なく,その代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉してはならない(弁護

     士職務基本規程第52条)。

      対象弁護士が,懲戒請求者の受任継続を確認せずに,直接に相手方であるA工

     務店に請負金請求を断念することを求める文書を送付したことは,「品位を失う

     べき非行」に該当する。

      また,対象弁護士がA工務店に送付した文書は,確定判決により対象弁護士の

     依頼者に対するA工務店の請負代金債権が確定したものであるにもかかわらず,  

     対象弁護士と懲戒請求者との関係や,ホームページに掲載していた判決文の削除等

     を理由として請求しないように求める不合理なものであり,「品位を失うべき非

     行」に該当する。

   6 懲戒事由6及び7について

        懲戒請求者が主張している懲戒事由から3年が経過しており,弁護士法第63

     条により懲戒手続を開始することができない。

 

   第3 対象弁護士の弁明の要旨

   1 懲戒請求事由1について

    ⑴ 刑法第230条の2は,公然と事実を適示し人の名誉を毀損した場合であって

     も,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図

     ることにあったと認められる場合には,事実の真否を判断し,真実であることの

     証明があったときは,これを罰しないとして,その行為の違法性が阻却されるこ

     とを明らかにしている。

      対象弁護士がそのサイト上で適示した事実は,西村綜合法律事務所がインター

     ネット上において悪質なサギ広告を行っているという事実であって,弁護士の広

     告の持つ社会的意義に照らせば「公共の利害に関する事実」である。

      また,対象弁護士が上記事実を適示した目的は、一般市民に西村総合法律事務

     所のインターネット上の「サギ広告」に勧誘されないよう警告するためであって,

     「もっぱら公益を図ること」にあった。

      したがって,対象弁護士の行為は,適示した事実が真実である限り,それによ

     り懲戒請求者及び一法師弁護士の社会的評価が低下したとしても,違法性は阻却 

     される正当な行為である。

    ⑵ 対象弁護士が懲戒請求者の「サギ広告」の内容として主張している事実は,対

     象弁護士のウェブサイトにおいて明記しているように,西村綜合法律事務所の「津

     山の弁護士による交通事故・後遺障害相談」というウェブサイトにおいて,「解

     決事例」として表示している7件の事件のうち,実際に西村総合法律事務所が受

     任した事件は3件にすぎず,4件の事件は一法師弁護士が東京の法律事務所に勤

     務弁護士として在籍していた時期に関与した事例(以下「本件4事例」という。)

     を西村総合法律事務所が受任した事件であるかのように偽装したことである。

      インターネットを閲覧する者は,トップページを閲覧したうえで,「解決事例」

     のページを閲覧するのであって,「解決事例」のページに表示されている事件に

     つき,西村綜合法律事務所が示談交渉を受任し賠償金の増額を実現した事件であ

     るという表示はなくても,トップページに「岡山県北有数のご相談・解決実績」,

     「大幅な賠償金の増額実績多数」という表示があれば,「解決事例」のページに

     表示されている事件をトップページの表示の具体例を表示したものと考えるのが

     当然で,西村総合法律事務所が示談交渉を受任し,賠償金の増額を実現した事件

     として表示したものとしか解釈できない。

      なお,このように偽装しているのは,西村綜合法律事務所が,交通事故の示談

     交渉について,「岡山県北有数のご相談・解決実績」,「大幅な賠償金の増額実績

     多数」を有するという宣伝を行うために意識的に「解決事例」の件数の水増しを

     行ったもので,「大幅な賠償金の増額実績多数」という表示は虚偽である。

    ⑶ 懲戒請求者らの行っているサギ広告は悪質なものであり,これを放置すること

     は津山だけでなく,岡山の弁護士全体の秩序と信用とを根底的に揺るがせかねな

     いものとなると考え,懲戒請求者らによるインターネット上のサギ広告を問題と

     したものである。

   2 懲戒請求事由2について

                   津山市内の弁護士に書面を送付したのは,こそこそ行動するのではなく,何を

     問題にしているかを知らせた方がよいと考えたからで,懲戒請求者が悪質なサギ

     広告を行っており,それについて対象弁護士が岡山弁護士会に対し懲戒処分を請

     求したという重大な事実を同僚である津山の弁護士に対し報告したのは当然のこ

     とである。

    3 懲戒請求事由3について

      懲戒請求者の顧問先に文書を送付したのは,津山の弁護士の信用と秩序を維持  

     するために,懲戒請求者により「広告塔」とされている顧問先に対し,懲戒請求

     者がインターネット上で常習的にサギ広告を行っており,これに対し対象弁護士

     が弁護士会に対する懲戒処分の請求等の措置をとったという事実は知らせておい

     た方がよいと考えたためである。

   4 懲戒請求事由4について

      ウェブサイトに掲載するに際して,事件の相手方名を伏字にするかどうかは事

     件の性質によって判断している。A工務店はテレビの広告をする等津山では著名

     な建設業者であり,かかる会社が施工した工事について裁判所が工事の瑕疵及び

     工事費用の水増しを認定した判決を下したという事実は,公共の利害に関する事

     実であって,判決の公開によりA工務店の社会的評価が低下しても,公共のため

     に公開する価値のある事実であると判断したからである。

   5 懲戒請求事由5について

      判決確定後にA工務店に書面を送付したのは,A工務店に関する判決を対象弁

     護士のウェブサイトから削除したことを契機に,これ以上争いを継続することは

     A工務店にとっても採算があわないものであるということを理由としたもので,

     問題があるものではない。

      懲戒請求者ではなく,A工務店に直接書面を送付したのは,上告審判決にA工

     務店の代理人として懲戒請求者の名が記載されていないのを見て,A工務店と懲

     戒請求者との間の代理関係は消滅していると判断したこと,また,裁判所に掲示

     されている開廷表から,A工務店は懲戒請求者以外の弁護士を代理人とするよう

     になっていると認識したので,依頼関係はないだろうと考えたことによる。

   6 懲戒請求事由6について

      訴訟提起したのは,懲戒請求者が,工事代金という金銭債権について,代金及

     び利息に加えて「弁護士費用の支払いを求める訴訟」を提起すると告知したこと

     について,どのような理論的根拠によって金銭債権について「弁護士費用の支払

     いを求める訴訟」を提起するということが可能なのかを懲戒請求者に明らかにさ

     せる必要があると考えたためである。

   7 懲戒請求事由7について

      懲戒請求者が「誹謗中傷」とする準備書面の内容は,「訴訟と無関係な誹謗中

     傷」を述べたものではなく,懲戒請求者の行為の動機を述べたものであり,誹謗

     中傷にはあたらない。

 

  第4 証拠

      末尾の証拠目録記載のとおり

  

  第5 当委員会の認定した事実

   1 懲戒請求事由1について

    ⑴ 懲戒請求者は,平成27年1月15日に岡山県津山市内に弁護士法人として西

      村綜合法律事務所を設立し,同年2月18日には東京都港区虎ノ門に従たる事務

      所を開設し,一法師が社員として加入した。

    ⑵ 西村綜合法律事務所は,平成27年4月21日にホームページを開設し,その

     ウェブサイトにおいて,一法師弁護士が東京都港区所在の弁護士法人法律事務所

     Astiaに勤務していた当時に担当した交通事故に関する本件4事例を「当事

     務所所属の弁護士による成功事例」として掲載した。

    ⑶ 西村綜合法律事務所は,平成29年8月に交通事故に特化した新たなウェブサ

     イト「津山の弁護士による交通事故・後遺障害相談(弁護士法人西村綜合法律事

     務所)」を開設し,このウェブサイトにおいては,「岡山県北有数のご相談・解決

     実績」,「大幅な賠償金の増額実績多数」,「交通事故の圧倒的経験と実績」等の

     表示をするとともに,「解決事例」として7件の交通事故の事例を掲載したが,そ

     のうちの4件は本件4事例であった。

      なお,上記ウエブサイトの「死亡の事案 示談の金額450万円増額の例」とい

     う表題のあるページには,当該事例の外,「解決事例の最新記事」として6件の

     事例を掲載しているが,この合計7件の事例も上記のウェブサイトに「解決事例」

     として掲載された7件と同一のものであった。

      また,弁護士ドットコムの「西村啓聡弁護士(弁護士法人西村綜合法律事務

     所)」のサイトには,「実際にあった解決事例」,「交通事故の解決事例」として,

     本件4事例のうち3事例が掲載されていた。

    ⑷ア 対象弁護士は,平成31年3月15日頃,自身の「津山総合法律事務所」の

      ウェブサイトのトップページに,「西村綜合法律事務所(西村・一法師)のイ

      ンターネット上のサギ広告問題」と表示するとともに,「新着情報」として「2    

      019/03/11弁護士法人西村綜合法律事務所のインターネット上のサギ

      広告について,西村啓聡・一法師拓也の両名を岡山地方検察庁津山支部に刑事

      告発」と記載し,その日のうちに,その記載を削除したうえ,同じく「新着情

      報」として「2019/03/11弁護士法人西村綜合法律事務所のインター

      ネット上のサギ広告について,岡山弁護士会に同弁護士法人及び弁護士西村啓

      聡・一法師拓也の懲戒処分を請求」と記載した。

     イ 対象弁護士は,上記ウエブサイトのサイトリンク内の「西村綜合法律事務所

      (西村・一法師)のインターネット上のサギ広告問題1」と表示された「詳し

      くはこちらから」の箇所をクリックしたページに,岡山弁護士会へ懲戒請求者

      らを懲戒請求をしたことについて,以下の説明とともに3月11日付け懲戒請

      求書を掲載した。

       「弁護士法人西村綜合法律事務所の行っているサギ広告とは,同弁護士法人

      が開設した「津山の弁護士による交通事故・後遺障害相談(弁護士法人西村綜

      合法律事務所)」と題するインターネット上のサイトにおいて,同弁護士法人

      が,交通事故の示談交渉について,「岡山県北有数のご相談・解決実績」を有

      し,「大幅な賠償金の増額実績多数」を有すると宣伝し,「最新」の「解決事例」   

      として7件の事件を表示しているが、真実には,7件の事件のうち,同弁護士

      法人が示談交渉を受任した事件は3件にすぎず,4件の事件は,一法師が同弁

      護士法人の社員となる以前に東京の法律事務所に勤務弁護士として在籍してい

      た時期に関与した事件を,同弁護士法人が受任した事件であるかのように偽装

      しているものであるというものであって、極めて悪質なものといわざるをえな

      いものであります。

       弁護士が,弁護士の懲戒処分を弁護士会に請求するというのは異例のことで

      はありますが,弁護士法人西村綜合法律事務所は,上記のようなサギ広告をイ

      ンターネット上において常習的に行っており,同弁護士法人のインターネット

      上のサギ広告をこのまま放置することは,津山の弁護士の信用と秩序を著しく

      毀損するものであるため,やむなく今回の措置をとることにいたしました」

       そして, 3月11日付け懲戒請求書には、「対象弁護士西村及び対象弁護士

      一法師のごとく,弁護士でありながら,サギ師同然の行為を行って恥じること

      のない輩」という表現も記載されていた。

     ウ また、上記ウェブサイトのサイト内リンクの「西村綜合法律事務所(西村・

      一法師)のインターネット上のサギ広告問題2」と表示された「詳しくはこち

      らから」の箇所をクリックして表示されるページには,この懲戒請求にかかる

      対象弁護士作成の平成31年3月22日付け主張書面の全文が,また同じくサ

      イト内リンクの「西村綜合法律事務所(西村・一法師)のインターネット上の

      サギ広告問題3」と表示された「詳しくはこちらから」の箇所をクリックする

      ことにより表示されるページには,対象弁護士作成の同年4月8日付け主張書  

      面の全文が掲載されており,これらの主張書面においては,「弁護士としては  

      絶対に許されないサギ師同然の行為」,「悪質なサギ広告」,「サギ広告をインタ

      ーネット上において常習的に行っていた」等の記載がなされていた。

   2 懲戒請求事由2について

      対象弁護士は,平成31年3月11日付けで下記の内容の書面を作成し,同日

     付け告発状及び3月11日付け懲戒請求書の各写しを添え,いずれも津山市内の

     法律事務所である岡山パブリック法律事務所津山支所,飯綱浩二法律事務所,弁

     護士法人有元実法律事務所,香山法律事務所及び吉村法律事務所へ送付した。

      「西村啓聡弁護士につき,弁護士の職業倫理に反する振る舞いが目に余るもの

     であったところ,平成27年頃,当時の民主党の衆議院岡山3区公認候補となろ

     うとしていたため,当職は,岡山弁護士会に西村の懲戒請求を申立てることによ

     り,内定していた民主党の公認の話をぶち壊しにしてやりました。

      当職としては,西村については,政治生命を潰してやれば,いずれは津山から

     は出ていくものと考え,その後は西村に対する攻撃は控えておりましたが,西村

     は,当職に政治生命を潰されながら,今更東京に帰ることもできないようで,こ

     の間,当職が西村に対する攻撃を控えているのをよいことに,恥知らずにも何と

     か津山で弁護士として生き残ろうと,色々と画策しているようであります。

      そのため,当職は,この度,弁護士法人西村綜合法律事務所のインターネット

     上のサギ広告について,西村啓聡及び一法師拓也の両名を不正競争防止法違反で

     岡山地方検察庁津山支部に刑事告発するとともに,両名及び弁護士法人西村綜合

     法律事務所の懲戒請求を岡山弁護士会に申立てましたのでご報告いたします。

   3 懲戒請求事由3について

      対象弁護士は,西村綜合法律事務所のウエブサイトでその顧問先を確認し,平

     成31年3月14日付けで下記の内容の書面を作成し,同月11日付け告発状及

     び3月11日付け懲戒支給書の各写しを添え,西村綜合法律事務所の顧問先であ

     るC大学,株式会社D及び有限会社Eへそれぞれ送付した。

      「弁護士法人西村綜合法律事務所の西村啓聡及び一法師拓也の両弁護士につき,

     以前より弁護士の職業倫理に反する振る舞いが目に余るものであったところ,こ

     の度,同弁護士法人がインターネット上でサギ広告を常習的に行っている事実が

     明らかとなったため,当職は,西村及び一法師の両名を岡山地方検察庁津山支部

     に不正競争防止法違反で刑事告発するとともに,岡山弁護士会に両名及び弁護士 

     法人西村綜合法律事務所の懲戒処分を請求いたしました。

      当職は,西村や一法師のごとき,弁護士でありながら,サギ師同然の行為を行

     って恥じることのない輩を放置することは,津山の弁護士の信用と秩序を害する

     ものと考え,西村及び一法師を刑事告発した事実についてはすでに各方面に通知

     済みであります。

      当職の今回の措置により,弁護士法人西村綜合法律事務所と顧問契約を締結さ

     れている貴社にも,今後少なからぬ影響が生じることになるものと思いますが,

     当職の措置は津山の弁護士の信用と秩序を維持するためのやむを得ないものであ

     りますので,ご了解ください」

   4 懲戒請求事由4について

    ⑴ 平成27年11月24日,懲戒請求者らが原告A工務店の訴訟代理人,対象弁

     護士が被告Bの訴訟代理人となって審理が勧められた56万円余りの支払を求め

     る請負代金請求訴訟(平成26年(ハ)第274号事件)の判決が津山簡易裁判

     所で言い渡された。

      上記判決は,原告の工事には契約内容どおりではない瑕疵があったとして被告

     は瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を有し,また,見積書に記載されているが未

     設置の設備についても工事代金を支払っているといえるので,被告はこれらにつ

     き不当利得返還請求権を有するとして,工事の残代金等の請求権との相殺を認め,

     その結果,被告の残代金等の支払義務は消滅したとして原告A工務店の請求を棄

     却する内容のものであった

    ⑵ 対象弁護士は,上記判決言渡し後の平成27年11月下旬頃,同弁護士の「津

     山綜合法律事務所」のウェブサイトのトップページの「新着情報」の欄に下記の

     文章(ただし「A工務店」は実名)を記載し,「最近の判決」と表示された「詳た

     しくはこちらから」の箇所をクリックすることにより,判決全文につき被告名を

     載せたまま閲覧することができる状態にした。

      「2015/11/24津山簡裁平成26年(ハ)第274号請負代金請求事

     件判決(全部勝訴)A工務店の工事の瑕疵・工事費用の水増しを認定」

   5 懲戒請求事由5について

            ⑴ 前項の判決に対し,A工務店は懲戒請求者らが訴訟代理人となって控訴し,平

     成28年7月13日,岡山地方裁判所において,控訴人の工事に瑕疵は認められ  

     ないが,被控訴人は未設置の設備の不当利得返還請求権を有しているとして,前

     項の津山簡易裁判所の判決を変更し,被控訴人Bに対し控訴人A工務店に48万

     円余りの支払を命じる内容の判決が言渡された(平成27年(レ)第143号)。

    ⑵ 対象弁護士は,⑴の岡山地方裁判所の判決も,津山総合法律事務所のウェブサ   

     イトに掲載した。

    ⑶ 平成30年11月16日,⑴の岡山地方裁判所の判決に対し,Bが対象弁護士

     を訴訟代理人として上告していた上告審の判決が広島高等裁判所で言渡された。

     (平成28年(ツ)第28号)。Bの上告を棄却する内容であった。また,この

     判決には被上告人としてA工務店のみが記載され,訴訟代理人として懲戒請求者

     らの表示はなかった。

    ⑷ 対象弁護士は,平成30年11月20日付けで下記の内容の文書を作成し,A

     工務店に送付した(ただし「B氏」は実名)。

      「貴社とB氏との間の訴訟事件につき,当方からの上告以来2年にしてようや

     く広島高等裁判所の上告審判決が下されました。

      上告審判決の内容は,当方としては承服しがたいものではありますが,上告審

     判決が下された以上は,当方としてもそれを受け入れるほかないものであります。

      本件は請求額はたかだか50万円の事件であり,通常ならば,弁護士が受任し

     て採算の合う事件ではありません。

      それにもかかわらず,当職が本件を受任し,本件の裁判を通常の事件以上の精

     力を費やして争ったのは,別に貴社に恨みがあったためではなく,ただ,貴社が

     代理人に選任した西村啓聡弁護士に弁護士の職業倫理を逸脱したふるまいが見受

     けられ,長年津山で弁護士を行ってきた人間として,西村弁護士のふるまいを看

     過することができなかったためでした。

      当職が拝察するところでは,現在,貴社は西村弁護士とは特別の関係を持って

     おられないよう見受けられます。

      そのため,当職といたしましては,上告審判決が下されたのを機に,本件はこ

     れで幕引きにしたいと思い,これまで当法律事務所のホームページに掲載してお

     りました貴社とB社との間の訴訟事件の一審及び控訴審の判決はホームページか

     ら削除しました。

      つきましては,貴社におかれましても,本件はこれで幕引きにしていただきた

     く,B氏に対し,請負代金の請求等の措置に出ることはお控えくださるようお願

     いいたします。

      仮に,貴社が,今後,B氏に対し,請負代金の支払い請求する措置に出られる     

     のであれば,当職としては,B氏の代理人として,これまでと同様に,全力で貴

     社と争わざるをえませんが,貴社が西村弁護士を代理人としてB氏に対し訴訟を

     提起して以来上告審判決までのこれまでの約4年間の貴社の負担を考えても,本

     件についてこれ以上争いを続けることは,貴社にとっても採算の合うものではな

     いと考えますので,賢明な判断をされるよう期待する次第であります。

   6 懲戒請求事由6について

      対象弁護士は,平成26年12月10日,津山簡易裁判所に対して,Bの訴訟  

     代理人となって,懲戒請求者とA工務店とを被告として,50万円の支払を求め

     る損害賠償請求訴訟を提起した。

      これは,懲戒請求者がA工務店の代理人としてBに送付した請負代金を請求す

     る内容証明郵便において,工事代金の支払いがない場合には弁護士費用まで加え

     た金額を請求する訴訟を提起する旨を告知していたことを指摘し,本来は,工事

     代金とい金う銭債権について,代金及び利息に加えて「弁護士費用の支払いを求

     める訴訟」を提起することは認められていないとして,Bをして,A工務店から

     訴訟を提起されて敗訴した場合には,工事代金のみならず弁護士費用をも負担し

     なければならないと畏怖させ,工事代金の一部を支払わせたもので恐喝罪に該当

     すると主張し,慰謝料30万円及び弁護士費用20万円の計50万円を請求する

     ものであった。

   7 懲戒請求事由7について

      対象弁護士は,前項の請求にかかる平成27年1月26日付け準備書面におい

     て,懲戒請求者につき,「程度の低い内容の主張を平然として,その馬鹿さ加減

     をさらけだしている」,「いくら被告西村が馬鹿でも」,「落選して以来,弁護士と

     しての業務はほとんど行わず,もっぱら民主党からの資金援助によって生活して

     いたが,…民主党からの資金援助によって生活することが不可能となり,津山

     で弁護士として生計をたてていかなくてはならなくなった人間であって,被告A

     工務店は被告西村の数少ない顧客であり,被告西村のような弁護士にとっては,

     被告A工務店から得る僅かばかりの報酬も十分に違法行為を行う動機となりう

     る」等の主張を行った。

   

  第2 当委員会の判断

   1 懲戒請求事由1の行為について

    ⑴ 弁護士法は,「弁護士法は,常に,…高い品性の陶やに努め…なければなら

     ない」と定め(第2条),弁護士職務基本規程(以下「職務基本規程」という。)

     は,「弁護士は,名誉を重んじ,信用を維持するとともに,廉潔を保持し,常に

     品位を高めるように努める」(第6条),「弁護士は,他の弁護士,弁護士法人,

     …との関係において相互に名誉と信義を重んじる」(第70条),「弁護士は,

     信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れてはならない」(第71条)と規定し

     ている。

      職務基本規程第6条は,弁護士が弁護士法第1条第1項の基本的人権の擁護と

     社会正義の実現という使命を果たし,「法の支配」を社会の隅々にまで行き渡ら

     せる役割を果たすためには,国民からの信頼と支持が何よりも重要であることか

     ら,弁護士は,自他の名誉を重んじつつ人格的にも国民の信頼を受けるに足る廉

     潔を保持し,常に品位を高める努力を怠ってはならないという心構えを定めたも

     のである。

      また職務基本規程第70条は,「弁護士は,相互に名誉と信義を重んじ,みだ

     りに他の弁護士を誹ぼう・中傷してはならない」と定めていた旧弁護士倫理第4 

     3条を同趣旨とされており,弁護士が相互に他の弁護士の名誉と信用を尊重する

     ことによって,弁護士全体の品位と名誉,信用が維持され,弁護士に対する信頼

     と尊敬が維持されることになることから,依頼者や市民の信頼を得るために,職

     業集団としての弁護士全体の品位と信頼の保持を趣旨とするものである。

      そして,職務基本規程第71条は,同規定第70条の規律を具体化し,他の弁

     護士を不利益に陥れてでも,自己または依頼者の立場を有利にしようとするよう

     な行為のないよう,弁護士間の信義の維持をその趣旨とするものである。ここに

     「信義」とは,自由,独立,品位を重んじ誠実かつ公正に職務を行うべき弁護士

     職として要求される客観的な信義をいう。

      対象弁護士の津山総合法律事務所のホームページ等において,懲戒請求者が代

     表社員である西村総合法律事務所のウェブサイトの記載を「サギ広告」等と厳し

     く指摘した行為等については,上記弁護士法及び職務基本規程の各規程を踏まえ

     て,弁護士法第56条第1項の弁護士としての「品位を失うべき非行」に該当す

     るものであるかどうかが判断されることになる。

            ⑵ 対象弁護士は,刑法第230条の2の名誉棄損罪の規定を援用し,弁護士の広

     告の持つ社会的な意義に照らせば,「サギ広告」として適示した事実は「公共の

     利害に関する事実」であり,適示した目的は一般市民に西村綜合法律事務所のイ

     ンターネット上のサギ広告に勧誘されないように警告するためであって,「もっ

     ぱら公益をはかる」ことにあったことから,適示した事実が真実である限り,違

     法性が阻却される正当な行為であると主張する。

      しかし,対象弁護士の行為が懲戒請求者らの名誉を毀損する側面を有するもの

     であるとしても,当委員会は,名誉棄損罪が成立するかどうかに関わりなく,対

     象弁護士の行為が弁護士法及び前記職務基本規程等に照らして「弁護士としての

     品位を失うべき非行」に当たるかどうかを判断するのであって,そこには弁護士

     に対する信頼の維持という独自の観点も加わることから,自ずとその判断は異な

     るものである。

    ⑶ まず,西村相綜合法律事務所のウェブサイト上の記載を「サギ広告」と断定した

     表現について検討する。

      平成31年3月8日時点で西村綜合法律事務所の「津山の弁護士による交通事

     故・後遺障害相談」のウェブサイトのうち,「解決事例」のページ及び表題が「死

     亡の事案 示談金額450万円増額の例」のページに,交通事故の解決事例が7

     件掲載されているが,このうち4件は本件4事例であり,西村綜合法律事務所で

     扱ったものではない。

                  西村綜合法律事務所の「津山の弁護士による交通事故・後遺障害相談」のウェ

     ブサイトのページには,「岡山県北有数のご相談・解決実績」とか「大幅な賠償

     金の増額実績多数」とか「交通事故の圧倒的経験と実績」などの記載があり,交

     通事故事案の解決に関心をもってこのウェブサイトのページを閲覧した市民は,

     本件4事例をも西村綜合法律事務所において取り扱った事例の例示として認識す

     るのが自然である。

      また,弁護士ドットコムの懲戒請求者のサイトに掲載されている3事例は,本

     件4事例のうちの3事例であるが,同サイトを見る限り,懲戒請求者自身が取り

     扱って解決したものとしか受け取れない。

      したがって,西村綜合法律事務所及び弁護士ドットコムの上記ウェブサイトの

     本件4事例に関わる各記載は,西村綜合法律事務所や懲戒請求者が取り扱ってい

     なかった事例を西村綜合法律事務所あるいは懲戒請求者が解決したものであるか

     のように誤認させる可能性のある広告である。

      しかしながら,本件4事例を取り扱った一法師弁護士は現に西村綜合法律事務

     所に勤務する弁護士で,交通事故の取扱実績も多く,弁護士法人としての西村綜

     合法律事務所には本件4事例を含む交通事故事案の経験豊富な弁護士が在籍して

     いることに偽りはないから,交通事故事案の経験が乏しいのに経験のある事務所

     であるかのように見せかけて依頼へ導くという類いのものではなく,また,交通

     事故事案の未経験であることに伴う実害を生じさせるおそれもない。

      したがって,西村綜合法律事務所等のウェブページにおいて本件4事例を同事

     務所等の解決事例であるように掲載したことは,記載の仕方として適当とは言え

     ないとしても,詐欺などと評価される程のものではなく,これを捉えて「サギ広

     告」であると決めつけ,「弁護士でありながら,サギ師同然の行為を行って恥じ

     ることのない輩」などと懲戒請求者らが詐欺を行っている者であるかのように貶

     める攻撃的言辞はあまりにも行き過ぎたもので,同僚の弁護士である懲戒請求者

     らを不当に誹謗,中傷するものであると言わざるを得ない。

    ⑷ しかも,対象弁護士は,この容認すべきでない記載を自身のウェブサイトにお

     いて公開し,広く一般市民の目に晒していたのである。一般的には社会において

     信頼されるべき立場にある弁護士のウェブサイトであるから,これを閲覧した市

     民は,そこに記載されているとおりに,懲戒請求者らについて詐欺紛いの行為を

     するような問題のある弁護士であるとの印象を受ける可能性は大きく,しかも弁

     護士会に懲戒請求したことの記載は,さらにその印象を強めてしまうものである。

     対象弁護士の懲戒請求事由1の行為は,懲戒請求者らの名誉,社会的信用を大き

     く失墜させ,その業務を妨害する行為であることは明らかであり,また,弁護士

     に対する信用をも損う行為である。職務基本規程第6条,第70条及び第71条

     の趣旨から容認できるものではなく。弁護士としての「品位を失うべき非行」に

     該当する。

   2 懲戒請求事由2の行為について

      対象弁護士が津山市内の各法律事務所に対して送付した書面には,前項で述べ   

     た懲戒請求者らを誹謗・中傷する「サギ広告」との表現に加え,懲戒請求者につ

     いて,「弁護士の職業倫理に反する振る舞いが目に余るものであった」,「恥知

     らずにも何とか津山で弁護士として生き残ろうと,色々と画策しているようであ

     ります」などと,懲戒請求者を著しく謗る内容が穏当とは言えない表現で記載さ

     れており,懲戒請求者の名誉,社会的信用を低下させるものと言える。

      この懲戒請求事由2の行為のみを取り上げても職務基本規程第6条,第70条

     及び第71条の趣旨に照らし,弁護士としての「品位を失うべき非行」に当たる

     と解さざるを得ないが,懲戒請求事由1の行為で懲戒請求者らの社会的信用を損

     う記載を広く一般市民の目に晒した状態に置き,加えてこのような行為に及んだ

     ことは,より厳しい評価につながるものである。

         3    懲戒請求事由3の行為について

      対象弁護士は,懲戒請求事由1及び懲戒請求事由2の行為に止どまらず,西村

     綜合法律事務所の顧問先に対しても書面を送付しているが,その文面には,懲戒

     請求者及び一法師弁護士につき,「以前より弁護士の職業倫理に反する振る舞い   

     が目に余るものであったところ,この度,同弁護士法人がインターネット上でサ

     ギ広告を常習的に行っている事実が明らかになった」,懲戒請求者や「一法師の

     ごとき,弁護士でありながら,サギ師同然の行為を行って恥じることのない輩を

     放置することは,津山の弁護士の信用と秩序を害する」といった誹謗,中傷に加

     え,「西村綜合法律事務所と顧問契約を締結されている貴社にも,今後少なから

     ぬ影響が生じることになると思います」などと西村綜合法律事務所の顧問先であ

     るが故に何らかの悪影響が生じることを仄めかす記載もある。

      この書面は弁護士から送られてきたものとして問題が重大で只事ではない印象

     を与え,しかも,その内容は,これらの顧問先に対して懲戒請求者らへの信頼性

     に疑義を生じさせ,懲戒請求者が代表弁護士である西村綜合法律事務所の業務を

     正に直截に妨害するものであって,弁護士として許される行為ではなく,極めて

     強い非難に値するものである。懲戒請求事由3の行為も職務基本規程第6条,第

     70条及び第71条の趣旨に反するものであることは明らかであり,弁護士とし

     ての「品位を失うべき非行」に該当する。

   4 懲戒請求事由4の行為について

    ⑴ 当会綱紀委員会において,懲戒請求事由1の行為は「品位を失うべき非行」に

     あたるとは評価できないとしている。

    ⑵ 綱紀委員会は懲戒委員会の審査手続に付すべきかどうかを判断する機関である

     から,当委員会は,綱紀委員会が弁護士の品位を失うべき非行にあたるとして当

     委員会の審査手続に付すべきと判断した事項についてのみ審査をすべき立場にあ

     ると考える。

    ⑶ したがって,懲戒請求事由4の行為については,当委員会は綱紀委員会の判断

     を尊重し,当委員会として改めて判断することはしない。

   5 懲戒請求事由5の行為について

    ⑴ 職務基本規程は,「弁護士は,相手方に法令上の資格を有する代理人が選任さ

     れたときは,正当な理由なく,その代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉し

     てはならない」と規程する(第52条)。

    ⑵ 対象弁護士は,第5の5⑶の上告審判決において被上告人の訴訟代理人として

     懲戒請求者らの名が表示されていなかったこと,裁判所に表示されている開廷表

     から,A工務店は懲戒請求者ら以外の弁護士を代理人とするようになっていると

     認識したことの2点をもって依頼関係はないと考えたと弁明するが,懲戒請求者

     らから辞任の連絡もないのに,受任関係の解消の有無の確認をすることなく,上

     記事実のみをもって懲戒請求者らとの依頼関係がないと判断するということは根

     拠として薄弱と言わざるを得ず,到底,「正当な理由」があったと認めることは

     できない。

    ⑶ また,送付した書面には,裁判によって確定した権利について,その行使がな

     されるならば,「全力で貴社と争わざるを得ません」などと正当な権利の行使に

     圧力を加える記載があり,法秩序の一翼を担う弁護士として不当な主張である。

    ⑷ 懲戒請求事由5の行為は,上記職務基本規程に違反するだけでなく,送付した

     書面の内容も不当であり,これらを併せ考慮すると,弁護士としての,「品位を

     失うべき非行」に該当する。

   6 懲戒請求事由6及び同7の行為について

    ⑴ 当会綱紀委員会において,弁護士法第63条により懲戒手続を開始することは

     できないとして当委員会に事案の審査を求めないことを相当とする議決をしたも

     のである。

    ⑵ したがって,当委員会における審査の対象にはならない。

   7 以上のとおり対象弁護士の行為のうち,懲戒請求事由1ないし3及び同5の行為

    は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての「品位を失うべき非行」に該当

    すると判断する。そして,懲戒請求事由1ないし3の一連の行為は度を超えたもの

    で弁護士として著しく品位を欠き,また,懲戒請求者らだけでなく周囲に与えた影

    響も大きいこと,弁護士に対する信頼を大きく損う行為であること,対象弁護士に

    はこれらの行為に対する反省が全く認められないことを考慮すると,対象弁護士を

    3月の業務の停止に処することを相当と認め,主文のとおり議決する。

 

                            2020年7月3日

 

              岡山弁護士会懲戒委員会

                委 員 長   河  原  昭  文  ㊞

 

                委   員   鷹  取     司  ㊞

 

                委   員   西  田  秀  史  ㊞

 

                委   員   山  崎  博  幸  ㊞

 

                委   員   森  脇     正  ㊞

 

                委   員   野  上  あ  や  ㊞

 

                委   員   鈴  木  隆  元  ㊞

 

                委   員   池  田  宏  行  ㊞ 

 

 

                      証 拠 目 録

 

                        (省略)